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思い出の論文:チョコレートのう腫手術後の卵巣機能不全

  • 執筆者の写真: Yuki Miyabe
    Yuki Miyabe
  • 10月28日
  • 読了時間: 2分

Postsurgical ovarian failure after laparoscopic excision of bilateral endometriomas.

Busacca M, Riparini J, Somigliana E, Oggioni G, Izzo S, Vignali M, Candiani M.

Am J Obstet Gynecol. 2006 Aug;195(2):421-5. doi: 10.1016/j.ajog.2006.03.064. Epub 2006 May 8. PMID: 16681984.


 当時(2006年)、浜松医大の産婦人科医局ではこの論文が掲載された雑誌(通称アメジャ)を定期購読していて、暇なときにパラパラとみていた。その時にこの論文が偶然目に入り、その内容を知るとかなりの衝撃を受けたと同時に自分の無知を恥じた。論文の内容は、チョコレートのう腫の手術をした126人の患者さんのうち3人が手術後に卵巣機能不全(早発閉経)に陥ったとの報告である。それまで自分が経験した患者さんのなかで術後に卵巣機能不全に陥った患者さんはいなかったし、多分、一部の医師を除いて産婦人科医全体もそれほどこのリスクにたいする認識は少なかったと思う。つまり卵巣の手術によって卵巣の働き(卵子の備蓄、女性ホルモンの産生)が損なわれる可能性があることにあまり危機感をもっていなかったと思う。しかし2002年ごろからこのような報告が少しずつ報告されていた。この論文を目にした日から、どうすれば卵巣の手術後に卵巣機能をできるだけ損なわないような手術を行うことができるか、あるいは手術の至適なタイミングや再発のリスクを減らすことなどについて多くのことを自分で学び始めた。


 実は、今でも特に妊娠希望の患者さん、不妊症の患者さんのチョコレートのう腫の手術方法は今でも一つの答えはない。自分の術式に関してこの論文を目にするまでは先人の教えをいかに再現すること(とても重要である)だけを考えていたが、これ以降は学んだことをベースにいかに自分自身の手技を確立することを考え始めた。

 
 

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