術後の感染対策としての腟洗浄
- Yuki Miyabe
- 6月17日
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腹腔鏡子宮全摘術を行う患者さんには術前後にほぼ毎日腟洗浄(加えてメトロニダゾール腟錠剤の挿入)を行っている。患者さんは毎日内診があるので大変だと思う。
腹腔鏡手術の経験が増えたり、術式が安定してくると自分の経験からもデータ的にも合併症の発生率は減ってくる。そしていつも通り手術が終わったとき、また術直後に患者さんが安定して順調な回復をしていても最後に残された課題が術後感染(腟断端炎、骨盤内感染)である。術後感染が一度発生すると入院期間の延長、再入院、場合により再手術など患者さんには苦痛をもたらす。さらに腸閉塞などのリスクにもつながる。
しかしどんなに工夫していても、また術後感染のリスクが低いと想定される患者さんにも発生するリスクはある。過去にいろいろと術式の工夫や抗生剤の種類を変更してもあまり改善はされなかった。数々の過去の文献をあたっていくと子宮全摘術(開腹や腟式)の前後に腟洗浄と抗生剤であるメトロニダゾールの腟錠やゲルを投与すると術後感染の発生率が減少したとの1980年後半にいくつかの論文にであった。菌交代症のリスクはあるが数日の処置なので大きな問題になることは考えにくい。以降腟洗浄とメトロニダゾール腟錠剤の挿入を行っている。その結果、現在のところ暫定的な結果ではあるが術後感染の発生率は4.3%から1.3%に減少している。また少ないながら術後感染が発生した患者さんも軽症で済んでいる。これまでこの方法による有害事象もない。
患者さんも毎日の腟洗浄は大変ではあるが術前後の腟洗浄は術後感染(腟断端炎、骨盤内感染)予防に有効であると考えている。