骨盤臓器脱手術
ご自身の組織を生かした手術(NTR)を基本とします
骨盤臓器脱の手術は、現在までのところ一つの術式で全てを解決できる方法はありません。手術の経路として腟から行う(経腟式)方法、腹腔鏡下に行う方法、あるいはそれらを組み合わせた方法などがあります。またメッシュという網目状の人工物を体内に挿入して臓器(子宮、膀胱、直腸など)を支える方法とメッシュをつかわないで主にご自身の組織を生かしてこれらの臓器を支える方法があります。
それぞれの方法にメリット・デメリット、あるいはそれぞれの患者さんの向き不向きがあります。メッシュを使用する手術の方法は弱っている場所にメッシュを挿入して補強するので支えがより強固であり再発率がやや低いというメリットがあります。しかしメッシュ挿入にともなう副作用としてメッシュびらん(体内に挿入したメッシュが腟からでてくること)やそれに伴う感染、出血、腰痛、腹痛、骨盤内感染、便秘症、アレルギーなどがあります。これらの発生率は数%であり決して頻度の高いものではありません。さらにメッシュの挿入方法によりそのリスクの程度は異なります。しかし感染などを起こした場合、ときに深刻な状態に陥ることもあります。そのときにメッシュを抜去する必要がありますが体内に深く埋め込まれたメッシュの抜去には困難を伴いその手術による合併症(出血、臓器損傷、感染など)も危惧されます。
そのため新都市病院では現在のところできるだけメッシュを使用しない方法、つまりご自身の組織を生かした手術を主に行っています。メッシュは一旦体内にいれると生涯、メッシュによる合併症は発生する可能性があります。そのためメッシュを挿入するのは最後の手段、あるいは重症例などに温存していたほうがよいのではないかと考えています。主に腹腔鏡手術と腟式手術を組み合わせて手術をしていますが、その再発率は10%以下で比較的な良好な成績であると考えています。しかもメッシュを使用していないので上記に記した心配なこととも無縁です。
最終的には患者さんの希望は当然のこと、年齢や行動範囲、様式、生活などを考慮しつつ骨盤臓器脱の治療方針や手術の方法を検討させていただきます。