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vNOTESを現在のところ導入しない理由

最近、婦人科腹腔鏡手術、特に子宮全摘においてお腹にまったく傷をつけない手術、vNOTESが注目されている。学会などでも演題数も多く、病院のホームページをみてもお腹に傷のないvNOTESを導入していますといった記載を見かける。患者さんにとってvNOTESは、傷が残らないというのとても魅力的な選択肢であるし、時代の進歩を感じるとても素晴らしい試みであると思う。  ただし、私は現在のところvNOTESは導入していない。おそらく10年以上前から台湾や欧米の術者による報告によりvNOTESの存在は認識していた。しかし当時、その論文や動画をみると、やはりどうしても自分にとって、vNOTESは導入しずらい手術であると判断していた。  その理由は子宮全摘でもっとも大事な工程のひとつである膀胱と子宮を分離する手技(いわゆる膀胱剥離)が、どうしてもブラインド(盲目的)操作になってしまうことである。これはvNOTESも腟式子宮全摘術(TVH)と全く同じ作業である。  私がまだ研修医だった頃、腟式子宮全摘術を指導の先生と行った際に最初の膀胱剥離の際に膀胱損傷をおこしてし

巨大子宮筋腫の子宮は意外と子宮動脈上行枝にアプローチしやすい

子宮筋腫が大きくなってしまったり、多発してときにお臍を超えるぐらいの大きさにまで子宮が大きくなってしまうことがある。その場合の子宮全摘は出血のリスクが高くなることがある。 その場合は子宮動脈を内腸骨動脈の分岐部でできれば遮断できるとよいが、子宮が大きすぎて側方への術野展開が難しいことがある。内腸骨動脈から子宮動脈への分岐部は骨盤のやや深いところに位置しているためである。 そんなときはこの位置での子宮動脈の遮断を諦めざることが多い。でもここで開腹手術に変更したりすることをすぐに考える必要はないと考えている。それは子宮動脈の上行枝が巨大頚部筋腫でもない限りは、比較的尿管から離れて存在しているためである。子宮動脈自体も延長していることが多い。子宮動脈の上行枝を左右ともに遮断できれば、その後に大出血するリスクはほとんどない。そのため静脈損傷に注意しつつ、諦めずに子宮側方の組織を少しずつ切離していく。すると子宮の可動性が少しずつよくなり、突然といった感じで子宮動脈上行枝に出会えることが多い。子宮動脈上行枝をここでしっかり凝固できると、その後の工程をすすめる

子宮全摘術後の仕事復帰:デスクワークの場合は約2週間後くらいから

子宮筋腫や子宮腺筋症、子宮内膜症などで子宮全摘術をうける患者さんの多くが仕事や家庭で多忙な年代の患者さんがほとんである。そのため入院前から入院中、あるいは退院後も繰り返し、質問を受けることもしばしばある。他の人にかわってもらうことも難しい場合も多いのだろう。 例えば、デスクワークがメインでほとんど一日中パソコンの前での作業に従事している患者さんの場合は、退院後2週間後ぐらいからを職場復帰の目安としている。ところがこのときにはまだ腟の断端の融合、回復は完全ではなく実は治癒の過程で腟断端から出血が起きやすい時期でもある。だからあまり下半身や骨盤に負担のかからない作業にしておいたほうが無難である。デスクワークで通勤がほとんど車である場合は、体力の復帰や痛みの軽減を考えると退院後2週間の復帰が無難であろうと考えている。でも東京などの都市部の患者さんは磐田や浜松の患者さんより通勤で歩いたりすることが多かったり、通勤時間も長いことが多いかもしれないからもう少しゆっくりしたほうが良いのかもしれない。 結局、デスクワークがメインでそんなに活動量が多くない日常であ

子宮筋腫に対するMRI画像診断の限界

MRIやCTなどの画像診断装置が多くの病院やクリニックで普及していてその普及率は世界一とも言われる。病院だけでなく整形外科や脳神経外科のクリニックにも備えていたり、画像診断専門のクリニックなども存在し、患者さんにとってこういった画像診断にアクセスできることはとても安心できるし、便利であると思う。 婦人科疾患では特にMRIはとても役にたつ。以前も書いたことがあるけど手術の戦略を立てるうえで極めて有効である。さらには、それ以前に子宮筋腫の質的診断、つまり本当に良性かを診断するのにMRIは必要である。その正診率も高く、MRIで子宮筋腫であり、子宮肉腫ではなさそうと診断されるとほとんどの場合、実際手術をすると子宮筋腫とかなり高い確率で診断される。 一方、MRIを手術前に施行して子宮筋腫と診断しても、最終的な病理組織診断で子宮肉腫(STUMP含む)や悪性度の高い子宮体癌の筋層浸潤などとの鑑別が困難であることも稀ながらある。頻度は少ないがどちらも実際に自分でもどちらも経験しており手術をしてみて初めて判明している。 そのため子宮筋腫の経過や、患者さんの年齢、筋

ゆ着(くっついていること)は意外と痛くないことが多い

ゆ着(くっついていること)による痛みは話題にでることがときどきある。確かに患者さんから聞かれることもあるし、自分からもゆ着があるから痛みが…などということも多い。 ゆ着の原因は多岐にわたる。子宮内膜症によるゆ着、過去の骨盤内感染(PID)によるゆ着、帝王切開後のゆ着、婦人科手術後のゆ着、虫垂炎などの外科手術後のゆ着などがある。どれも手術をするときには、ゆ着が酷いことになっていないか実はかなり心配している。 ところで、ゆ着は痛みの原因になるのかどうかと言うと、ゆ着だけ、つまりくっついていることだけで痛みが生じることはあまりない。その証拠に特にそんなにゆ着がないと想定して手術に望んた場合に、逆に酷いゆ着があって驚くことのほうが圧倒的に多い。 ではどんなときにゆ着によって痛みが生じるかというと、小腸や大腸などの腸管がゆ着をしてそれらが動いたとき、さらに引っ張っられるようなときに痛みがもっとも感じるのではないかと考えている。その証拠に食後に下腹部が痛くなったり張ったり、また便が直腸を通るときなど痛みを生じることがある。このような場合はもしかしてゆ着がある

子宮筋腫核出術の再発は筋腫の個数によることが多い

子宮筋腫核出術は子宮筋腫にたいする子宮を残す手術である。これから妊娠を希望する患者さん、あるいはいろいろな理由で子宮を残したい患者さんを対象に行うことが多い。 その子宮筋腫核出術で最も問題なのが、術後の再発である。多発することが子宮筋腫の特徴の1つであり、手術のときにすでに多発していることもある。もちろん手術のタイミングをいつにするかを考えることは最も大切なことであるけど、それを含めて手術後の再発をしやすいかどうかは治療方針を決める上でとても大切である。 これまでの論文や報告、あるいは自分の経験からは手術前の筋腫の個数、手術終了時の残存筋腫の個数、あるいは年齢などが再発率に影響をすると考えている。どれも何となく理解はしやすい。47-48歳以上の患者さんで子宮筋腫核出術を行ってもその後、子宮筋腫がつぎつぎに発生したり大きくなることは比較的少ない。これは閉経が近づいているためである。 しかし、年齢が若い生殖年齢の患者さんに多発性の子宮筋腫にたいする筋腫核出術を行った場合はその再発はかなり高い確率で起こることが多い。簡単にいうと、子宮筋腫ができやすい体

最初に執刀した医師が、あらゆる段階に携わる

The patient going through a surgical complication need all the support she can get from family, friends and the treating staff. Although the surgeon responsible for a complication will naturally feel the embarrassment and sometimes will want to avoid the patient and family, this is not helpful to anyone. The surgeon should not withdraw from the patient unless asked. Time at the patient's bedside will help provide an important part of the emotional support which will be helpf

かつて旅した国からの患者さん

学生の頃、いまから30年以上前に休みのたびにバックパックを担いてふらふらと旅をした国からの患者さんがときどき受診をしてくれる。 思い出してみるとその国々はベトナム、インドネシア、タイ、マレーシア、ミャンマー、台湾など多岐に渡っている。磐田のような地方の小さな街でも意外と色々な国の皆さんが生活していることがわかる。製造業の盛んな街だから比較的多いのかもしれない。 自分が実際に旅したそれぞれの国では、運がよかっただけかもしれないけど個人的にはほとんど嫌な目にあったり危険な目にあったことがなかった。現在のようにインターネット、さらにはスマートフォンなどが普及する前だったから、まだ旅は手探りのような状況が多かった。道に迷って遭難しそうになっていると目的地まで連れて行ってくれたり、いきなり入った食堂で何を頼んでいいか困っていると、となりのテーブルの人が通訳してくれて思いがけない美味しい料理に出会うことができたりした。また宿で発熱してつらそうにしていると、消化のよさそうな食べ物(あれはベトナムでワンタンのスープだった)をもってきてくれたりした。ほかにもそれぞ

粘膜下筋腫核出術後の生理の量の軽減:やや時間がかかることもある

粘膜下筋腫でも子宮筋腫が子宮内腔への突出率が比較的少ないタイプがある。いわゆるFIGO分類でtype1やtype2以外の粘膜下筋腫である。これらは子宮筋腫の多くの部分が筋層内に存在している。これらも突出率は大きくないが、過多月経(生理の量が多い)や不妊症の原因になるから、手術の適応となることが多い。 結構大きな、例えば10cm以上のこのような粘膜下筋腫を核出することもある。その場合、子宮筋腫を核出(取り除く)したあとに正常子宮筋層を縫合する。できるだけ正確に縫合するが、手術終了時の子宮は正常子宮より遥かに大きいことが多い。このように一度大きくなった子宮はすぐにはもとの大きさに戻らず、時間をかけて小さくなっていくことが多い。 そのため手術後の生理の量は最初の数カ月は手術前のそれほど変わりないこともあり、患者さんもがっかりしてしまうこともある。しかし数カ月かけて子宮が小さくなっていくにつれて生理の量も徐々に減っていくことが多い。筋腫核出術後のおよそ6か月後ぐらいでその変化もなくなることが多い。 かなり個人差は多いが、少し気長に生理の量の軽減を期待する

術後の患者さんがすたすた歩くと安心する

手術後の入院中の患者さんがすたすたと歩いて診察室にきてくれたり、また病棟の廊下をすたすたと歩いてくれたりしているととても安心する。 腹腔鏡下手術ではどんな手術でも手術翌日から患者さんがすたすたと歩いていることはあまりなく、痛いとまではいかないけどやはりお腹の中は重いし、また皮膚の傷口もまだ違和感があることが多い。これはほとんどの患者さんの通常の経過である。それが2日目、3日目となるとだんだん足取りが歩くなることが多い。やはり、お腹の中の手術による炎症や気腹の影響が取れてきているのだろう。 でも術後3日目から4日目(退院日)になっても足取りが重そうだったり、おなかを抱えながら少し前かがみで歩いていると心配になる。もちろん、そんなときに必ずしも術後感染症や腸閉塞などが発生しているわけではない。しかし、もしかしてと患者さんのお腹を触らせてもらったり、あるいは採血を念のためすることもある。逆にすたすたと軽やかに歩いてきてくれるとほとんど安心できるし、精神的にも落ち着いて帰宅してもらえるのではないかと思っている。

脂肪はどっちの組織や臓器についている?:剥離面のヒントにする

手術をするときに、体内の脂肪の存在は多すぎると出血量増加、他臓器損傷、手術時間の延長などのリスクがつながることがある。確かに、手術を行うときは、正直、脂肪が多すぎないほうが手術中のストレスは少ない。 しかし手術のときに脂肪がなければ(そんなことは絶対にない:脂肪組織もある意味重要な臓器である)、それで良いかといわれる全くそんなことはない。脂肪がないと適切な剥離面に入ることはできないからである。もちろん脂肪組織の中に剥離をすすめるわけではなくて、脂肪がどの臓器に付随しているのかを考え、その境目を剥離面に使用することが多い。 間違っているかもしれないけど、自分の認識では子宮本体で明らかに脂肪組織があるのは卵管間膜だけである(正確に言えばここば卵管と卵巣の間である)。でもここはそれほど難しい剥離部分ではない。子宮筋腫などの良性疾患の子宮全摘の際に行われ単純子宮全摘術では特に膀胱と子宮、直腸と子宮の間の剥離面が最も重要である。膀胱と子宮の間の剥離は帝王切開後の子宮全摘、また直腸と子宮の間の剥離は子宮内膜症でゆ着している場合の子宮全摘の際に難易度があがる。

粘膜下筋腫は小さなときから手術をすることがある

子宮筋腫の手術の適応を考えるとき、その大きさや個数以外に、筋腫が発生している場所はとても重要である。そして子宮筋腫はその発生部位によって、漿膜下筋腫、筋層内筋腫、粘膜下筋腫に分けられる。この分類のよいところは、それぞれで症状が異なり、ある程度治療の方針がそれぞれで立ちやすいことである。 粘膜下筋腫は、子宮の中(内腔:生理で出血するところ)が突出している(とびでている)子宮筋腫である。一般的には粘膜下筋腫の症状は、過多月経(生理の量が多いこと)、不正出血、あるいは不妊症などである。生理の量でいえば、さらにその突出する程度によって、症状の強さや期間などが異なるが、それが最終的には悪化してしまったり、ホルモン治療がうまくいかなくなることも多い。 そのため、例えば1-2cmぐらいの大きさの粘膜下筋腫でも手術の適応となることもある。もちろん安易な手術は好ましくないが、手術で子宮筋腫を取り除かないと出血をコントロールできないことも多く、手術はこのように子宮筋腫が小さなときから行うこと多い。 患者さんにとって手術は大変だけれど、こういった場合、子宮鏡で手術でき

生理の量が多いときに、痛みも強いときは子宮腺筋症を疑ってみる

30から40歳にかけて生理の量が多くなり、仕事や家事に支障をきたしてしまうほどにまでなる患者さんがいる。また血液検査で貧血の数値が(Hb)が8.0g/dl前後やそれ以下まで低下してしまっていることがある。 そんなときはまずは粘膜下筋腫を疑ってみるのは基本である。粘膜下筋腫は子宮の内腔(子宮内膜側)に飛び出している子宮筋腫であり、過多月経(生理の量が多い)や不正出血原因になりやすい。 しかし、粘膜下筋腫の出血は比較的、とにかく出血が多いことが症状のメインで、意外と生理痛は少ないことが多い。もちろん生理痛がないという状態ではないけど、痛くて寝込んでしまうようなことは少ない。 逆に痛みが強くて寝込んでしまうようなこと、あるいは鎮痛剤を1日に3回以上も内服することがあると患者さんが教えてくれるようなときは子宮腺筋症を疑う必要がある。 子宮腺筋症は生理の量の多さに加えて、痛みが強いことが特徴的である。子宮腺筋症は子宮内膜に似た組織が子宮の壁(筋層)のなかに発生する病気である。子宮筋腫と比べるとやや知られていない病気ではあるが、症状は深刻であることも多い。ま

子宮全摘後に最後に残るきずは下腹部の小さなきず:3mm鉗子の手術

腹腔鏡手術のきずは一般的に10mmか5mmの大きさであることが多い。ほとんどの腹腔鏡手術をする器具(スコープ、鉗子、電気メスなど)がこの太さであるためである。 いろいろな理由、あるいは制限があって10mmあるいは5mmの器具を使うかは決めているが、できればより小さなきずで手術をすることで、患者さんの痛みを少なくしたり、回復を早く、さらに将来きずが残りにくいといいなと思っている。 もちろん、きずが全くないと最高だけど(実際にきずのない子宮摘出として腟式子宮全摘術やvNOTESなどがある)、自分としてはやはりこれまでの腹腔鏡手術のよさを損なわず、かつ慌てて他の方法に切り替えたりする可能性ができるだけ少ない方法を追求したいと思っている。 その方法として、3mmの鉗子を部分的に使用した腹腔鏡手術、特に腹腔鏡下子宮全摘術(TLH)を行っている。この場合、5mmのきずおへその中、3mmのきずを左下腹部、下腹部の真ん中に5mmきずの3つのきずでほとんどの手術を行っている。このようにきずを施せば、へその中のきずはへその奥に埋もれるし(ただしへそは肥厚性瘢痕がおこ

5mmと3mmのきずの違い

3mmの細い腹腔鏡手術用の器具で手術を行うことが多い。とくに腹腔鏡下子宮全摘術はそのほとんどの患者さんでこの器具を使っておこなっている。 では実際、5mmと3mmのきずの違いってってあるのかな?って思われてしまうかもしれない。実際こうやって5mm、3mmと書いていると、違いがあるの?って自分でも少し心配になってくる。 でも今日も腹腔鏡下子宮全摘術後の患者さんのお腹のきずをみさせてもらったけどやはり、5mmのきずは小さいけどそれなりに残っているけど、3mmのきずはほとんどわからなくなっている。 正直、5mmのきずは5mmといっても実際はもう少し大きい。3mmはほとんどこの3mmのままである。これは器具の性質にもよるのだけど、大きさの違いは確実に認識できる。5mmのきずは一般的に想像できる切り傷のようにしっかりと確認できるが、3mmきずはなにか擦れたあとのような細かな感じである。 手術後終了時も、5mmのきずは縫い合わせることが多いが、3mmのきずは専用のテープで固定するだけで十分である。手術翌日もこれだけでほとんどきず口は塞がっている。...

子宮全摘術のほとんどをさらに小さなきずの腹腔鏡手術で行う

ゴールデンウィーク中に2025年4月から2026年3月までの新都市病院での手術の件数や内容を振り返ってまとめていた。新都市病院で2018年から手術を開始してもう8年にもなるけど毎年この作業をちょうどこの時期に行うことが多い。 この1年(2025年4月から2026年3月)で腹腔鏡下子宮全摘術(TLH)を行った患者さんは骨盤臓器脱の子宮摘出を除いて、119人であった。そのうち114人の患者さん(95.7%)が、3mmの細い鉗子(手術器具)を用いて行っていた。 毎回、「今日は3mmでやるからちょっと頑張らないと」って思いながら手術をしていたけど、実際ほとんどの場合、左手には3mmの鉗子を持っていた。思い返せば、5mmの鉗子だけで手術をした思い出がほとんどなかったことに気がついた。 この1年(2025年4月から2026年3月)は新都市病院の婦人科では開腹手術は0件であり、すべてを内視鏡手術でおこなっていた。さらに子宮全摘術のそのほとんどをさらに小さなきずで行っていたことになる。この方法を取り入れて10年以上、また本格的に応用し始めて7年経つ。...

チョコレートのう腫の卵巣温存手術を行うときは術中に柔軟に対応する

チョコレートのう腫の核出術は、だいぶ前から卵巣機能(卵巣予備能、卵子の数など)に対する悪影響が指摘されてきた。つまり、チョコレートのう腫の核出術を行うことによってかえって妊娠しにくくなってしまう可能性の指摘がある。 これはチョコレートのう腫を核出する際に、正常卵巣部分も一緒に取れてしまったり、また出血したときに止血をすることよって正常卵巣部分がダメージを受けてしまう可能性があるためである。 以前からチョコレートのう腫の手術はいろいろな方法が提案されてきた。現在でも核出術(ストリッピング)が第一選択ではあるが、他にも凝固(電気メスやCO2レーザーなど)やエタノール固定などが多くの方法がある。 また患者さんの年齢や挙児希望の強さ、痛みは不妊の程度、あるいはのう腫の大きさ、手術の主な目的(のう腫の縮小?あるいは不妊治療?)などによって手術に対する考え方は異なる。 さらに最も大切なのは手術のときの実際の感触であると思う。正常部分とチョコレートのう腫が分かれやすいのか?その分かれやすさの程度は? 出血しやすいのかしにくいのか?チョコレートのう腫の壁の厚さは

手術の難しさの評価は2つにわける:1年に数件の特に難しい手術とその他のほとんどの手術

手術がどれくらい難しそうかは手術前の評価でおおよその目安がつく。手術を長く行っていることもあり、以前よりその評価はだいぶ正確になってきていると思う。 手術の難しさを考えるとき、大きく分けて2つに考えている。 1つ目が、ごく一部のとても難しそうな手術である。割合からいって1年に数件である。子宮全摘では、例えば、子宮全体の大きさ、子宮筋腫の個数、発生位置、大きさ、可動性、子宮内膜症の有無、また過去の手術歴、その手術内容や所要時間によって評価している。たとえば子宮が臍の直下まであり、卵巣にはチョコレートのう腫があり、子宮筋腫が頚部よりに発生していて、また過去に子宮筋腫核出術や子宮内膜症の手術をしている、そしてさらにはその手術時間が5時間もかかっているような患者さんの場合はやはり最高のリスクと考えている。こういった場合に、手術前には患者さんにはさらに慎重な説明をするし、実際手術は4時間以上かかることが多い。 2つ目は、1つ目に述べたとても難しい一部の手術以外の、ほとんどである。意外に思えるかもしれないけど、だいたいそのように考えている。...

妊娠を成立させる3つの存在

外来で「私は妊娠できますか?」という質問を患者さんから受けることがある。私は子宮筋腫や子宮内膜症、卵巣腫瘍、あるいは子宮内膜ポリープなどが妊娠成立に与える影響については自分の専門であると思っている。でも不妊症の特別の検査や治療は専門外であるので、正直あまり詳しい説明をすることはできない。しかし、この質問について、私はまずは、妊娠が成立するための3つの存在について説明している。とても簡略化してしまっているけど、 その3つとは、 1. 卵子(排卵していること) 元気な卵子が、月に一度、決まった時期に卵巣から外へ飛び出している必要がある。これを排卵という。 2. 精子(そこに存在すること) 元気な精子が、適切なタイミングで子宮内に存在している必要がある。精子の数や運動率など、まずはそこに十分に届いているかが重要である。 3. 卵管(通り道)と子宮(場所) 卵子と精子が出会うための道が通っており、育つための場所が整っている必要がある。 卵管(通り道): 左右にある細い管が詰まっていないこと。ここで卵子と精子は出会い、受精する。 子宮(場所):...

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