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子宮筋腫の発生原因は?

​ いろいろな説がありますが、現在までのところ一つの説で説明することはできません。遺伝的素因の他に、人種差(日本人はやや多いです)、生理が規則正しいこと、体重が多い女性に発生しやすいなどの傾向があります。しかしどれも決定的ではありません。一方、女性ホルモン(エストロゲン=卵胞ホルモン、プロゲステロン=黄体ホルモン)などの関与は明らかです。その証拠に子宮筋腫が発生し、大きくなる女性はほとんどが生理が来ている女性であり、閉経をむかえると子宮筋腫は小さくなったり発生しなくなることがほとんどです。

子宮筋腫は食事や運動などの生活習慣の改善で予防や治療ができますか?

​ 残念ながら食事や運動などの生活習慣の改善により子宮筋腫の発生を予防したり、治療することはできません。逆に悪い生活習慣であったから発生しやすいということもありません。つまり子宮筋腫は生活習慣病ではありません。だから子宮筋腫が発生したからといって何も悪いことをしたから発生した理由でもありません。自分を責める必要はありません。

​子宮筋腫の症状は?

  • 不正性器出血、生理の量が多い、これらによる貧血、生理痛など

  • 下腹部の張り、痛みなど、固いものがある、腰痛など

  • ​尿が近い

  • 不妊症(主に着床障害)

​  実は無症状の患者さんが圧倒的に多く、症状のある患者さんは少数です。子宮筋腫が子宮のどこに発生するか(粘膜下筋腫、筋層内筋腫、漿膜下筋腫)によって症状が異なります。生理の量が酷く仕事や家庭生活に支障を来したり、ときに出血性ショックやその手前にまで及んでしまうことがあります。輸血も必要になることがあります。また慢性的な下腹部の原因や変性などによる発熱が生じることがあります。また特に多発した子宮筋腫の場合、治療の難しい不妊症の原因になることがあります。多くの患者さんは無症状で治療に必要はありませんが、ある患者さんにはその後の人生を左右してしまうようなこともあり十分なフォローが必要です。

​子宮筋腫の治療は?

対症療法: 

 生理痛について鎮痛剤や子宮を弛緩させるくすりなどを内服します。また生理の量を減らすためにトラネキサム酸を内服します。中程度ぐらいまでの生理の量の多さの場合までトラネキサム酸は効果がある印象があります。トラネキサム酸はシミ改善や美白効果の目的に皮膚科で処方されることも多く、患者さんから生理の量が減ったとうかがうことがあります。

ホルモン療法:

 低用量ピル(ルナベルULD®など)や黄体ホルモン剤(ディナゲスト®など)を内服します。 中等量ぐらいまでの生理の量をコントロールすることが可能です。どちらのくすりも比較的安全に内服できますが特に低用量ピルは血栓症の注意が必要です。また黄体ホルモン剤は不正性器出血が大量になることがあり、特に粘膜下筋腫のある患者さんは注意が必要です。

 手術前に貧血を改善したり、子宮筋腫を小さくする目的に偽閉経療法(レルミナ®、リュープリン®)などを投与することがあります。効果は非常に高いですが、副作用に更年期障害がありほてりやのぼせ、関節痛などの症状が発生することがあります。手術前によく偽閉経療法を行いますが、漢方薬などでこれらの症状に対応しています。また偽閉経療法を使用した逃げ込み療法(くすりを使用している間に閉経がくることを期待する)と称する治療法がありますが、ほとんどが失敗に終わるため行っていません。くすりを終了したのちにほとんどの場合、生理が戻ってきてしまいます。​

​子宮筋腫の手術は?

 手術は子宮筋腫の治療の最後の手段と位置づけられますが、早めに手術を決断したほうが良い場合もあります。特に不妊症で子宮筋腫が明らかな着床障害に原因となっているとき、生理の量が多くて薬物療法で出血量をコントロールできないとき、貧血が著しいときなどです。このような場合は早めに手術をすることに妊娠成立に近づいたり、生命の危機を脱することができます。

​ また長年、生理の量が多くて日常生活に支障をきたすような場合も、タイミングをみて手術を行うことがあります。その場合、手術後非常に生活が楽になることが多いです。

 子宮筋腫の手術方法として子宮筋腫核出術と子宮摘出術があります。基本的に子宮筋腫核出術はその後の妊娠の希望があるとき​、また子宮温存を希望するときなどに行います。また子宮摘出術はその後妊娠を希望しないとき、あるいは子宮温存が困難なときに行います。もちろんこれだけの因子で決まるわけではなくそれぞれの長所短所を考慮して決定します。

​ 手術の経路として、従来からの腹腔鏡、ロボット支援下の腹腔鏡、開腹、腟式があります。新都市病院ではほぼ全例の子宮筋腫の手術(筋腫核出、子宮摘出)を従来からの(ロボット支援下ではない)腹腔鏡下手術で行います。

  • 腹腔鏡下子宮筋腫核出術​​​ 

​    全腹腔鏡下子宮筋腫核出術(TLM:Total Laparoscopic Myomectomy)

    腹腔鏡補助下子宮筋腫核出術(LAM: Laparoscopic  Assisted Myomectomy)

  • 腹腔鏡下子宮全摘術

​    全腹腔鏡下子宮全摘術(TLH: Total Laparoscopic Hysterectomy)

                 腹腔鏡補助下子宮全摘術(HALH: Hand Assisted Laparoscopic Hysterectomy​​)

  これらの術式の何れかで行います。当科の手術で特徴的なのは大きな子宮筋腫、癒着の酷い状況に対応が可能であること、3mmの細い鉗子(手術をする道具)で小さなきずの手術が可能であることなどです。

 また子宮筋腫の手術には現在のところ、手術手技や患者さんの回復具合、その医療コスト(含む社会保障費)の面からロボット支援下の手術は不必要であると考えています。

子宮筋腫とはどんな病気?

​ 子宮筋腫は子宮の壁(平滑筋という筋肉)から発生する良性(がんではない)腫瘍です。20歳から40歳代の女性に発生、成長することが多い病気です。日本人女性の約70-80%に発生するといわれていますので、決して珍しい病気ではありません。多くの患者さんは手術などの治療は必要ありませんが、患者さんの総数は多く、子宮筋腫の症状は多彩であるため個々の患者さんそれぞれに対応した治療の計画が必要です。

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