さらに小さなきずの手術
3mmの細径(細い)鉗子による手術:特に子宮全摘術
腹腔鏡手術のメリットはきずが小さいこと、その小さなきずなのにお腹が広く見渡せること、またお腹の奥深くまで観察できること、顕微鏡のように拡大して観察することがあります。以前からきずを小さくしたり、きずの数を減らすことを追求してきました。しかしこれらを追求するあまり、腹腔鏡手術のメリットを損なうことがあります。これでは本末転倒になってしまうので本来の手術の安全性も損なわない方法を考えてきました。その方法として3mmの細径(細い)鉗子を広範囲に活用しています。
3mmの細径鉗子を用いた手術はこれまでの腹腔鏡手術とほとんど変わりなく行うことができます。腹腔鏡下子宮全摘術で最もこの方法を使い、お臍の中に5mm、下腹部の中央に5mm、あと3mmのきずを1-2か所で手術を行います。お臍の中の5mmのきずや3mmのきずは数か月以上するとほとんどわからなくなります。つまり普通に目で確認できる残るきずは下腹部中央の5mmだけになります。2024年はこの方法で89%の腹腔鏡下子宮全摘術で行いました。最大890gの子宮筋腫の子宮摘出も行っています。
以前より腟式の子宮全摘術、最近ではvNOTESといわれる腹腔鏡下の経腟手術があります。これらはお腹に全くきずができないというメリットがあります。しかし癒着(くっついている)のある場合、経腟分娩をしていない場合、子宮が大きい場合、子宮筋腫ができている位置が複雑な場合などはこれらの手術が不可能な場合が多かったり、あるいは手術の途中で術式を変更するなど不安定な場合があります。
一方、細径鉗子を使用した手術はこれらの不利な状況にもほとんど対応ができ非常に安定した方法であると考えています。美容的な手術も追求しつつ、さらに安全性、安定性も充分に確保できる優れた方法であると考えています。