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腹腔鏡手術とおへそ:なぜおへそから?

  • 執筆者の写真: Yuki Miyabe
    Yuki Miyabe
  • 7月5日
  • 読了時間: 2分

 婦人科腹腔鏡手術は多くの場合、最初におへその中に切開をし、そこに細いスコープ(腹腔鏡)をいれることが多い。これは手術の過程において実は最も緊張する瞬間である。大血管や腸管があるお腹のなかに細い器具(トロッカー)を限られた視野で、できるだけ小さいきずで挿入するためである。ともすれば大事故(死亡例もある)につながる可能性もある。きずを大きくすればあまり緊張をせずにトロッカーを挿入することはできるけど痛みが増えてしまったり、美容的に劣ってしまう。そのため毎回、患者さんの皮膚の厚さや固さ、緊張などを見極めながら、もっとも適切なきずの大きさでおへそへのトロッカーを挿入している。

 ではなぜおへそから最初のトロッカーをいれるのだろう?おへそというのは構造上、底の部分が薄いためである。おへそはへその緒(臍帯)とつながっていたところである。さらに底の部分で血管(臍動脈、静脈)が通っていたために、組織が薄い。しかも皮膚の下は小さな穴があいていることもある。(それが著しいと臍ヘルニアといわれる状態になる。)このような構造がトロッカーを最初におへそから挿入する理由である。


 2つ目の理由は、おへそが体の左右の中央にあることである。特に子宮や卵巣は形態的に左右対称であるので全体を見渡しやすい。これは手術の効率性に大きく貢献する。


 3つ目はおへそがくぼんでいるので、上手くいくときずが目立たなかったり、さらにはきずがなくなってしまうことさえある。つまり美容的に優れたきずになる可能性がある。しかし場合によってへそが大きく変形してしまったり、でべそになってしまうこともある。これらを回避するためにいくつかの工夫をしている。また別に記したいと思う。


 
 

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