​腹腔鏡下子宮全摘術

手術後の自分のイメージをよく想像し、理解することが大切です

 子宮全摘術は子宮をまるごと取り除く手術方法です。子宮全摘は子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜症などで子宮摘出が必要になったときに行います。通常は、すでに妊娠を希望されない場合に適応となります。子宮全摘術は子宮筋腫の根治が可能であり、子宮腺筋症、あるいは子宮内膜症などの痛みの緩和にはもっとも効果的な治療です。そのため患者さんが妊娠を希望されない場合、あるいは43、44歳以降の患者さんの子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜症なとの手術方法としては子宮全摘術をおすすめすることが一般的です。ただし子宮全摘術を患者さんが受けられる場合、手術後の自分のイメージをよく想像し理解することが大切です。具体的な変化としては、生理(月経)が手術前まであった場合は、生理が停止することです。それ以外はほとんど変化がありません。卵巣を残した場合は、卵巣から女性ホルモンは継続して産生されます。つまり子宮摘出後に急に大きくホルモンバランスが崩れたり、更年期の状態になることは一般的ではありません。ただし子宮全摘をしたあとは、やや卵巣の働きが低下することが報告されています。また一定の期間をすぎれば、性行為はこれまで通り可能です。また子宮筋腫などの良性疾患(がんではない)で子宮全摘術をした場合は骨盤神経なども温存されるため、排尿の障害や性機能の障害はほとんどありません。また染色体も変化がないので、手術前から精神的にも女性であれば、子宮全摘後も女性であることに変わりありません。このようなことを手術前からよく理解しておくことが、手術後に精神的にも健康で送るために大切であると思います。左右の卵巣を両方とも同時に切除した場合は、手術後に女性ホルモン補充療法をすることを検討する必要があります。とくに子宮全摘術をしてある場合は、女性ホルモン補充療法中の性器出血などのリスクがないため安心して継続することができます。

ほとんどの子宮全摘を腹腔鏡下に安全に行います

 開腹手術の場合はきずが大きくなることが多く、腹腔鏡で行うことは非常にメリットが大きいと思います。子宮全摘術のほとんどを腹腔鏡で行っています。基本的な術式は全腹腔鏡下子宮全摘術(TLH: Total Laparoscopic Hysterectomy)という方法です。この方法によって、これまで開腹手術を行っていた子宮全摘術を、多くの場合腹腔鏡で行うことができるようになりました。尿管や血管などの重要な臓器を、一つ一つ腹腔鏡の拡大された視野で確認するため、手術にかかる時間はやや長くなりますが、再現性が高く、安心感をもって手術することができます。子宮の大きさが500gを超える子宮筋腫や、広いゆ着が予想される子宮内膜症などの場合にも安全に子宮全摘術を行うことができます。大きさの目安としてはおよそおへその下ぐらいまでに子宮筋腫で発育した子宮まで腹腔鏡下の子宮全摘を行っています。
 また、合併症に関しては、腹腔鏡下の子宮全摘術は開腹手術に比べて多いといった報告が多いのがこれまでの認識でした。とくに尿管損傷は腹腔鏡で行った場合は開腹手術の何倍も発生率が高くなるといわれていました。しかし執刀医である宮部の腹腔鏡下子宮全摘術での尿管損傷の発生は2020年1月現在まで(浜松医大付属病院、新都市病院、聖隷沼津病院)に0件です。新都市病院婦人科では子宮全摘のほとんどを腹腔鏡下に行っている現状を考えても、私たちの子宮全摘術の安全性は高いのではないかと考えています。また出血量も開腹手術に比べて明らかに少なく、ほとんどの場合100ml以下です。

骨盤の機能を温存し、骨盤臓器脱をできるだけ予防しています

 子宮全摘術後の問題点として、将来の骨盤臓器脱が発生するリスクが少しあがると報告されています。私たちは子宮全摘後の臓器をささえる組織の縫い方を工夫しています。将来、骨盤臓器脱ができるだけ起きにくくなるように努めています。患者さんひとりひとりの妊娠分娩歴や体質などによる将来の骨盤臓器脱のリスクを考慮しながら適切な方法を検討しています。手術後何年もたったあとに患者さんにこのような予防法のメリットを享受していただける可能性があり、地味ではありますが非常に夢のあることであると考えています。

​さらに小さなきずで子宮全摘術を行います

 技術や機器の発達により、それほど大きくない子宮、ゆ着が少ないことが予想される場合はより小さなきずで子宮全摘術を行っています。意外にも卵巣の手術よりも子宮摘出のほうがきずが小さくなることが多いのが現状です。新都市病院婦人科では直径3mmの細い器具を部分的につかって子宮全摘術を行う場合があります。この方法で手術を行った場合、痛みは少なく、術後の回復もより早い傾向にあります。また美容的に優れ、将来はほとんどきずが残りません。

またこの手術で子宮全摘を行うのが難しい場合も、すべて5mmのきずで手術で行うことがほとんどです。3mmほどではありませんが、1cm以上のきずをつくらない意味(痛みの軽減、回復の早さ、優れた美容性)は大きいと考えています。

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