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​腹腔鏡卵巣のう腫(腫瘍)手術

手術前の良悪性の慎重な診断が大切です

 卵巣腫瘍(卵巣のう腫)の手術は手術前の正確な診断が大切です。とくに卵巣がんである場合は、現在のところ腹腔鏡手術の一般的な適応ではありません。そのため手術前に超音波検査(エコー)、MRI、あるいは腫瘍マーカーなどの採血検査で正確に診断しておくことが大切です。良性(がんではない)の卵巣腫瘍であると診断した場合は、そのほとんどを腹腔鏡手術で行うことが可能です。卵巣の手術を行う場合、卵巣をまるごと取り除くか、あるいは悪い部分だけ取る除く(核出)かは、患者さんの年齢、これから妊娠を希望するかどうかによってひとりひとり異なります。

卵巣(卵子と女性ホルモン産生)にやさしい手術を行います

 卵巣を残す手術(核出)をする場合は、卵巣の働きである卵子と女性ホルモン産生の温存に最大限注意して行います。これから妊娠を希望される患者さんが多く、手術には細心の注意をはらって行います。卵巣は手術そのもので大出血がおきたりする可能性が少なく、また構造が比較的単純なため、どちらかと言えば基本的な手術ととらえられることがあります。しかしこのような卵巣の働きに愛護的に手術を行うことは女性のこれからの人生に極めて大切であると考えています。具体的には手術中に出来るだけ出血を起こさないこと、糸でしばったり、電気メスで焼く回数を減らすこと、また術後ゆ着を起こしにくいと思われる方法を工夫することなどです。また腫瘍部分をいかに無理なく取り除くかは、経験によるところが多い作業です。
 また特に成熟奇形腫(類皮嚢腫、デルモイド、皮様嚢腫)といわれる卵巣腫瘍は、若い女性で多いため、きずを小さくして手術を行う価値は高いと思われます。卵巣腫瘍の大きさは、腹腔鏡手術時の創部よりかなり大きいので、内容液をなるだけ漏らさないように注意して手術を行います。そのため切開を3cm程に行う腹腔鏡補助下手術(体外法)を行うことがあります。腹腔鏡補助下手術(体外法)は以前は3-4か所のきずで行っていましたが、いくつかの工夫により現在ではひとつのきずで行っています。普通の腹腔鏡下手術と比べるとややきずが大きく、痛みも強いのが課題ですが、きずは下着の下に隠れる位置にあるため意外ときずが目立ちにくいのがメリットです。
 また卵巣腫瘍はきずのバリエーションを工夫しやすく、単孔式(たんこうしき)手術や細い鉗子(作業する道具)をつかって、よりからだに負担の少ない手術を行うことが可能になる場合があります。私たちは卵巣の働きを守ることができたり、あるいは安全性に問題がないのであればより小さなきずで手術を行います。

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