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卵巣のう腫の手術で大切にしていること:部屋(のう胞)数の違いを知る

  • 執筆者の写真: Yuki Miyabe
    Yuki Miyabe
  • 12月20日
  • 読了時間: 2分

 卵巣のう腫(チョコレートのう腫や皮様のう腫など)と診断され、手術を勧められたとき、多くの患者さんは「卵巣がなくなってしまうのではないか」「将来の妊娠やホルモンバランスに影響が出るのではないか」と不安を感じると思う。


 腹腔鏡下卵巣のう腫核出術を行うとき、最も大切にしているのは卵巣機能の温存である。つまり、病変だけを取り除き、いかに正常な卵巣組織をダメージなく残すか、という点に心血を注いでいる。


 卵巣の機能(卵子や女性ホルモンをだすこと)を守るために、これまでさまざまな術式が提案された。手術中にいかに血管を傷つけないか、いかに熱によるダメージを抑えるかといった技術的な工夫はもちろん重要である。


 しかし、手術の難易度や、どれだけ正常部分を残せるかを決定づける大切な要因は、実はのう腫の構造(発生の仕方)にあると考えている。


卵巣のう腫には、大きく分けて「単房性(中身がひとつの部屋)」と「多房性(中身がいくつもの部屋に分かれている)」の2つのタイプがある。


単房性(たんぼうせい) 風船の中に水が入っているようなイメージである。この場合、正常な卵巣組織はのう腫の外側に押し広げられるように存在している。そのため、境界線がはっきりしており、正常部分をきれいに剥がして残しやすいことが多い。


多房性(たぼうせい) いくつもの小さな部屋が複雑に組み合わさっている。このタイプは、正常な卵巣組織がのう腫の壁の間に入り組んでしまっていることが多い。この場合、この壁の部分を分けて残すことはとても難しく、結局は一番外側の正常部分しか残せないこともある。


 術前の超音波検査やMRI検査でこの構造をできるだけ正確に把握するようにしている。さらには手術手技も単房性か多房性かで工夫をしている。特に年齢の若い患者さんは将来の妊娠がまずは最も近い目標であることが多いので、卵巣機能をできるだけ温存できるように努めている。

 
 

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