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子宮摘出(TLH)施行時の子宮動脈処理

  • 執筆者の写真: Yuki Miyabe
    Yuki Miyabe
  • 8月2日
  • 読了時間: 2分

 腹腔鏡下子宮全摘術、特にTLH:total laparoscopic hysterectomyを行うとき、子宮動脈をどこの部位で行うかは患者さんの状態、術者によって異なる。最近は子宮動脈を内腸骨動脈から分枝した部位、つまり子宮動脈本幹で処理せずに、いわゆる基靭帯(子宮動脈上行枝)で処理するのが最近の傾向のようである。私も近年、特に細径鉗子を用いた3portでTLHを多く行っていることもあり子宮動脈をいわゆる基靭帯(子宮動脈上行枝)部位で処理することが自然と増えている。この方法のメリットは子宮動脈の尿管枝が保たれることや組織の剥離が少なくてすむことであろう。


 私としてはできれば基靭帯(子宮動脈上行枝)で処理、しかし必要な場合はこれまで通り子宮動脈本幹で処理する必要があると考えている。TLHの利点の1つに比較的容易に子宮動脈本幹に到達できることである。これはTAHやTVHにはない腹腔鏡下手術ならでは利点である。これが特に子宮筋腫によって大きくなってしまった子宮、深部子宮内膜症などによってダグラス窩の癒着が酷い場合などに特に有効である。このような手術の場合、手術の最初の段階で子宮動脈を本幹で処理できると大量出血の可能性がかなり少なくなるので安堵する。


 また子宮動脈本幹に至るまでの手術解剖学的な腔を展開することにより尿管が確認できたり(実際には尿管を確認することは大きなメリットである)、子宮周囲の組織が緩んで手術がしやすくなったりする。このことは手術の完遂率を上げたり、尿管損傷のリスクを減らしてきた可能性もある。


 文献的には未だ最近でも子宮動脈の処理についての論文が数本ある。やはり大きな子宮の子宮摘出の際には子宮動脈本幹での処理が有効であるとの結論が多いようである。逆説的に考えれば、膀胱子宮窩腹膜を切離したあとに、いわゆる基靭帯(子宮動脈上行枝)部位で子宮動脈を処理できない場合は子宮動脈本幹で処理する必要があると考えている。これは多くの場合、深部内膜症でダグラス窩が癒着をしていたり、基靭帯まわりに子宮筋腫が存在する場合が多い。簡単な結論になってしまうけど。


 また尿管の内側、つまり子宮動脈本幹でも子宮側(つまり尿管枝を温存できる)で処理する提案もある。初期のHarry Reichらもこの位置で処理していた。しかし臓器(子宮)に近づくと動脈と静脈はもつれあうような解剖になるので、やや処理に時間がかかり、さらには不意な出血を招きやすく、また出血した場合、尿管への注意はより必要になるのでかなり慣れた術者のための難易度の高い手技であると思う。

 
 

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