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手術に集中すること

  • 執筆者の写真: Yuki Miyabe
    Yuki Miyabe
  • 7月1日
  • 読了時間: 2分

 腹腔鏡下子宮全摘術のほとんどを普通の腹腔鏡手術より細い細径鉗子(鉗子:手術をする道具)を使って行っている。さらには、助手の鉗子を無くして、自分の左右の手にしたそれぞれの鉗子だけを用いて手術を行うことが多い。すると臍に5mm、下腹部中央に5mm、左下腹部に3mmの切開だけで手術を行うことができる。当初は少しでもきずの数を減らして、患者さんの負担をなくそうという目的だった。もちろん助手の鉗子のサポートがないので手術野の展開がしにくかったり、組織に緊張を与えることが困難であることもある。でも工夫したり、なれたりするとあまり苦労をしなくなってきた。


 それよりも最もよかったのが、手術により集中できるようになったことである。助手の鉗子を使って手術をしようとするとどうしても、その鉗子の行き先や動きが気になる。また感情にもブレが生じるときがある。もちろんそんなときも集中はしているつもりであるが、やはり術野から意識が少し離れるというか曇るときがある。


 しかし、自分の鉗子だけで手術をしていると当然、自分の鉗子だけしか頼るものもない。助手の巧拙も気にならない。患者さんの臓器、組織から意識が離れていることもない。自分と患者さんだけが存在している気持ちになることができる。つまり、これが集中していることなのかとやっと最近になって分かった気がする。


 米国の子宮内膜症手術で有名なDr. David Redwine(2023年ご逝去された)はモニターを使わず、腹腔鏡のレンズ越しに直視で腹腔内を観察し、自分の2本の鉗子だけで引退時まで手術をしていた。その方法だと患者さんと純粋に向き合うことができると何かの医学雑誌でコメントしていた。私がとても真似できる方法ではないが、手術中の患者さんと手術をする自分との関係、感覚はRedwineがもっていたこのような感覚と同じようなものであるのかもしれない。



 
 

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