vNOTESを現在のところ導入しない理由
- Yuki Miyabe
- 7 時間前
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最近、婦人科腹腔鏡手術、特に子宮全摘においてお腹にまったく傷をつけない手術、vNOTESが注目されている。学会などでも演題数も多く、病院のホームページをみてもお腹に傷のないvNOTESを導入していますといった記載を見かける。患者さんにとってvNOTESは、傷が残らないというのとても魅力的な選択肢であるし、時代の進歩を感じるとても素晴らしい試みであると思う。
ただし、私は現在のところvNOTESは導入していない。おそらく10年以上前から台湾や欧米の術者による報告によりvNOTESの存在は認識していた。しかし当時、その論文や動画をみると、やはりどうしても自分にとって、vNOTESは導入しずらい手術であると判断していた。
その理由は子宮全摘でもっとも大事な工程のひとつである膀胱と子宮を分離する手技(いわゆる膀胱剥離)が、どうしてもブラインド(盲目的)操作になってしまうことである。これはvNOTESも腟式子宮全摘術(TVH)と全く同じ作業である。
私がまだ研修医だった頃、腟式子宮全摘術を指導の先生と行った際に最初の膀胱剥離の際に膀胱損傷をおこしてしまい、さらにはその後の回復も時間がかかり患者さんをとても苦しませてしまった経験がある。もう30年近くにもなるが、今でもそのときの自分の苦い思い出も全く消えていない。しかも当時、年間100件以上の多数の腟式子宮全摘術をおこなっており、さらに90%以上の子宮全摘術を腟式で行っていた病院においてである。
あのときの怖さは未だに残っており、どうしても、最初の一歩に盲目的な作業が残る手技が患者さんにとって最も安全であり合理的であるとは自分のなかでは考えにくい。
実際学会の報告や論文でも、特にvNOTESを始めて50例くらいまでは膀胱損傷の発生率が従来の腹腔鏡子宮全摘術と比べて明らかに高いとの認識はほぼ一致している。導入初期に3~5%以上の膀胱損傷の発生率という、少し驚いてしまうデータも散見される。執刀医や患者さんがそれをどう感じるかは個々によるが、個人的には看過できないと考えている。もしもブラインド(盲目的)操作のない腹腔鏡下子宮全摘術(TLH)を選んでいれば防げたかもしれない膀胱損傷をvNOTESを導入したばかりに起こしてしまったら私は一生後悔すると思う。私はこの20年以上、4000例以上の腹腔鏡手術において、膀胱や尿管の損傷を幸いにも1件も起こさずに済んでいる。
腹腔鏡下子宮全摘術(TLH)がこれほど普及した一番の恩恵は、実はお腹の傷が小さくなったことに加えて、カメラの拡大視野によって、膀胱との境界線をはっきりと目で見ながら、ほぼ100%コントロールして手術できるようになったことだと考えている。初めてTLHをみたときはなんて安全な術式なんだろうと感激した記憶がある。
自分としてはこのような腹腔鏡下子宮全摘術(TLH)の良さを損なわずに、かつ小さな傷で手術を行うことのできる3mmの細い鉗子を部分的に使ったTLHを行っている。これであれば術中に慌てて術式を変更したりする必要もなく、子宮の大きさ、ゆ着の有無、帝王切開の有無、経腟分娩の有無などに関わらずほとんどの子宮全摘術に対応できる。
決して学会等でも目立ったり、あまりキャッチーなプレゼンテーションができる術式ではないが、患者さんの安全性と整容性(傷の小ささ、少なさ)を損なわない方法としては現在のところ最も合理的であると考えている。もちろん、決してvNOTESを否定するものでなく、いつもどうしたらvNOTESでTLHを行うときよりさらに安全に膀胱剥離ができるかはいつも考えている。

