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同じ術者、同じ術式でも、なぜ痛みに違いが出るのか

  • 執筆者の写真: Yuki Miyabe
    Yuki Miyabe
  • 14 時間前
  • 読了時間: 2分

新都市病院の婦人科では私がすベて手術を執刀している。毎回ほとんど同じ術式や手順、器具や手術材料などで手術を行っている。そうすると術後の患者さんの回復具合や痛みも同じだろうと単純に考えてしまいがちだが、結構違いがあることが多い。


腹腔鏡下子宮全摘術(TLH)を行っても、翌朝、思ったより全然平気でしたと割と余裕のある患者さんと、痛みが強くぐったりと苦しそうな患者さんもいる。


医学的に見れば、術後疼痛の個人差は執刀医の手技だけで決まるものではなく、患者さん側の多様な要因が複雑に絡み合って生じることが分かっている。


第一に、生物学的な感受性の違いである。痛みの感じやすさ(痛覚閾値)や、オピオイド受容体・疼痛伝達に関わる遺伝子(OPRM1、COMTなど)の多型によって、鎮痛薬の効きやすさには生まれつき個人差が存在する。また、若年層やもともと慢性痛・線維筋痛症のような体質を持つ方では、痛みを強く感じやすい傾向がある。


第二に、心理社会的な要因が大きい。術前の強い不安や、痛みに耐えられないかもしれないという破局的思考(pain catastrophizing)、抑うつなどは、痛みを脳内で増幅させる強力な因子である。痛覚は単なる電気信号ではなく、心と脳のフィルターを通して知覚される。


第三に、同じ術式であっても、お腹の中の条件はひとりひとり異なる。筋腫の大きさ、癒着の程度、深部子宮内膜症の合併などによって組織への侵襲や手術時間は変わり、麻酔管理や鎮痛レジメンの微細な差異も影響を与える。


痛みの差は、決して患者さんの我慢強さの違いなどではないと考えている。身体の特性、心の揺らぎ、そしてお腹の中の状態に決まってくる。


これまでの反省や今後の工夫として、もう少し患者さんに術前に術後の痛みや回復のイメージをもっと具体的に伝える必要や不安の強い患者さんには追加の説明を行う必要があるのではないかと考えている。

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