子宮筋腫における予防的な手術はあるのか?
- Yuki Miyabe
- 2 日前
- 読了時間: 2分
子宮筋腫の日常診療において、ガイドラインや教科書を開くと必ず目にするのが症状がなければ経過観察、あるいは閉経後は経過観察という原則である。しかし、ときに症状がなくても手術をしておいたほうがよいと思われる場合もある。
典型的な例が、10cmを超えるような大型の有茎性漿膜下筋腫である。
子宮の外側に突出し、細い茎(くびれ)で子宮本体とつながっているこのタイプの筋腫は、現時点で頻尿や圧迫感などの明確な自覚症状がない場合、閉経すれば自然と小さくなることを期待されるケース、特に閉経後の場合は経過観察となることもしばしばある。
しかし、ここには長い患者さんの人生の間にはときとして2つのリスクがあると思われる。
その1つは、茎捻転のリスクである。細い茎でぶら下がっている大型筋腫は、ふとした拍子にくるりと捻れて血流が途絶え、劇烈な下腹部痛を伴う急性腹症を引き起こす。この場合、緊急手術が必要になる。
2つ目に、さらに臨床的に厄介なのが寄生筋腫化(parasitic leiomyoma)や異常血管新生の問題である。筋腫が長年にわたって周囲の組織(大網や腸間膜、後腹膜など)と接触し続けると、周囲の組織から新たな血管を引き込み、独自の血流ルートを確立してしまうことがある。子宮筋腫は寄生しやすい性質がある。私自身も過去に別の組織や血管網(内腸骨静脈系など)へ子宮筋腫の血管が著しく根を張っていた症例を経験している。
今は無症状だからと経過観察を続けた結果、年数が経ってから茎捻転で緊急手術になったり、異常血管が発達して手術難易度が劇的に跳ね上がってしまっては、結局のところ患者さんが大きな不利益を被ることになる。
もちろん、すべての無症状筋腫に対して手術を勧めるべきではないが、将来発生する可能性がある重大なリスク(緊急手術や手術困難化)を予見し、安全なうちに手術をするという予防的介入の視点もときとして必要であると考えている。
エビデンスやガイドラインはもちろん無視すべきでなく、診療の基本とするものではある。しかし、個々の患者さんの筋腫の形態、発生部位、そして将来的なリスクを丁寧に見極めることが大切であると考えている。
