術後退院はあまり焦らないほうがよい
新都市病院では腹腔鏡下手術の退院をほとんどの場合術後4日目と決めている。これは腹腔鏡下子宮全摘術、子宮筋腫核出術、その他卵巣の病気の手術などどれも術後4日目に退院としている。一部、不妊症の診断的な手術などはもう少し早い退院としている。しかし、欧米と比べると少し長い入院期間である。
腹腔鏡下手術の大きな利点は、傷が小さく術後の回復が早いことである。実際、手術翌日にはスタスタ歩き、食事もしっかり摂れる患者さんが少なくない。さすがに手術翌日朝はぐったりしていることが多いが手術後2日目にはかなり元気になっていることがある。そのため、回診時に「もうこんなに元気だから、早く帰りたいです」と言われてしまうことがある。
もちろん、実際物理的には帰宅できないわけではないが、もう少し院内にいてほしいことには理由がある。腹腔鏡下手術では止血や組織の切離に電気メスなどのエネルギーデバイスを使用する。このとき常に警戒しているのが、遅発性の合併症である。組織に加わった熱の影響で、手術直後は問題がなくても、数日かけて徐々に組織が虚血・壊死を起こし、術後3〜4日目頃になって初めて腸管の穿孔や尿管の損傷、あるいは二次出血といった重篤なトラブルとして顕在化することがある。
患者さんご本人は、痛くない=治った、と感じていても、体内では組織が修復と安定を図っている真っ最中である。この遅発性合併症の好発期を病院の管理下で過ごし、バイタルサインや微妙な腹部所見、採血データで異常がないことを確認しきるために、術後4日間というやや長いモニタリング期間が必要である
欧米では日帰りや早期退院を行う施設もあるが、それは退院後の訪問看護や24時間体制の専門救急バックアップが前提である。日本の保険診療の現場では、夜間に自宅で急変させてしまうリスクを考えれば、安全マージンを削ってまで退院を急ぐメリットは少ない。
「元気そうに見える時期」と「医学的に安全が確認できる時期」には数日のズレがある。退院までの数日間は、単にベッドで待機しているのではなく、目に見えない合併症をやり過ごすための重要な観察期間であると考えている。
