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かつて旅した国からの患者さん

  • 執筆者の写真: Yuki Miyabe
    Yuki Miyabe
  • 1 日前
  • 読了時間: 3分

学生の頃、いまから30年以上前に休みのたびにバックパックを担いてふらふらと旅をした国からの患者さんがときどき受診をしてくれる。


思い出してみるとその国々はベトナム、インドネシア、タイ、マレーシア、ミャンマー、台湾など多岐に渡っている。磐田のような地方の小さな街でも意外と色々な国の皆さんが生活していることがわかる。製造業の盛んな街だから比較的多いのかもしれない。


自分が実際に旅したそれぞれの国では、運がよかっただけかもしれないけど個人的にはほとんど嫌な目にあったり危険な目にあったことがなかった。現在のようにインターネット、さらにはスマートフォンなどが普及する前だったから、まだ旅は手探りのような状況が多かった。道に迷って遭難しそうになっていると目的地まで連れて行ってくれたり、いきなり入った食堂で何を頼んでいいか困っていると、となりのテーブルの人が通訳してくれて思いがけない美味しい料理に出会うことができたりした。また宿で発熱してつらそうにしていると、消化のよさそうな食べ物(あれはベトナムでワンタンのスープだった)をもってきてくれたりした。ほかにもそれぞれの国で私のような見知らぬ若者(しかもたまたま円高で旅をすることができただけの)を、無条件に親切にしてくれたり助けてもらった思い出ばかりである。


受診する外国の患者さんは20代から40代と比較的若い世代のかたが多い。もしかして彼女たちのお父さんやお母さんと私が旅したときになにか話したり、もしかして彼女がまだ赤ちゃんだったころに写真を撮らしてもらったかもしれないと思うことがある。そう思うと個人的はまだ旅の中にいさせてもらっているのかもしれない。


異国で病院に受診、しかも婦人科で男性医師に受診するのは心理的なハードルは高いと思う。こちらも言葉の問題(かつて旅先で隣の席の人が通訳してくれたように、今はAIの手を借りながらなんとか言葉の壁を埋めているが)や病院の体制として思い通りにならないことも多いはずである。


もちろん実際にその国に住んだり、仕事をしたりしたわけではなく、旅行をして通り過ぎただけなのでごく表面的なその国の姿しかみていないのは認識しているつもりである。また個人と言う枠を超えて、政治や社会的な問題があるのも一応は知っているつもりである。


しかし個人的には旅をしたときにうけたポジティブな思い出が圧倒的に多いから、受診してくれた患者さんにはできれば悪くない思い出として残って欲しいと願っている。もしかして当時親切を受けてばかりだった気まずさを、少しずつ目の前の彼女たちに恩返しをしている最中なのかもしれない。

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