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腟を開放しない腹腔鏡手術と、術後腹腔内感染(organ/space SSI)のリスク

  • 執筆者の写真: Yuki Miyabe
    Yuki Miyabe
  • 8 時間前
  • 読了時間: 2分

子宮筋腫や子宮腺筋症などの良性疾患で腹腔鏡手術を行う際、子宮を全摘するか(TLH、LAVH、vNOTESなど)、子宮頚部を残すか(LSH)、筋腫の結節のみを切除するか(LM)といった術式の違いが議論される。


術後の回復や妊よう性、将来的な頚部病変のリスクと並び、実は見過ごされがちだが重要な論点となるのが術後の腹腔内感染(organ/space SSI)のリスクである。


外科手術の創部分類において、無菌組織のみを扱う手術は清潔(Clean)とされるが、常在菌が存在する消化管や気道、生殖器(腟)を開放した時点で準清潔(Clean-contaminated)に区分が変わる。


子宮全摘術(TLH)や腟式アプローチ(LAVH、vNOTESなど)では、子宮を体外へ摘出するために腟円蓋部を切開して腟を開放する。この操作により、好気性菌や嫌気性菌が混在する腟内フローラに、無菌である腹腔内が直接曝露される。

一方、子宮頚部を残すLSHや、筋腫のみを核出するLMでは腟管を開放しないため、手術創は原則として清潔のカテゴリーに留まる。この解剖学的なアプローチの違いが、術後の深部感染リスクを左右する本質的な要因である。


実際、米国ACS-NSQIPのデータベース(約4万6千例)の解析でも、深部・臓器スペースの感染発生率は、腟を開放しないLSH(0.6%)が、開放するTLH(1.0%)やLAVH(1.1%)に比べて有意に低い(p=.001)。多変量解析においても、腟非開放は深部感染リスクの低下と独立して関連している。興味深いことに、腹壁の創部に生じる表層の創感染には術式間で差が認められない(いずれも約0.8%)。つまり、腟開放の影響は皮膚ではなく、骨盤腔内や腟断端周囲の深部感染(organ/space SSI)に特異的に現れる。


もちろん、これらのデータは観察研究に基づくものであり、患者背景や病態による交絡因子を完全に排除できるわけではない。また、筋腫核出術(LM)には出血量のコントロールや手術時間など別の留意点も存在するため、単に感染率のみで術式の優劣を一概に決定づけることはできない。


しかし、無菌の腹腔内に常在菌の存在する腟腔を交通させないという外科的メリットは極めて合理的である。


術式の最終決定には子宮頸がん検診の既往や病変の局在など総合的な判断が必要となるが、こうした解剖学的な開放・非開放がもたらす感染リスクの差も、安全な低侵襲手術を選択する上で念頭に置くべき重要な視点の一つであると考えている。

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