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子宮全摘術のほとんどをさらに小さなきずの腹腔鏡手術で行う

ゴールデンウィーク中に2025年4月から2026年3月までの新都市病院での手術の件数や内容を振り返ってまとめていた。新都市病院で2018年から手術を開始してもう8年にもなるけど毎年この作業をちょうどこの時期に行うことが多い。 この1年(2025年4月から2026年3月)で腹腔鏡下子宮全摘術(TLH)を行った患者さんは骨盤臓器脱の子宮摘出を除いて、119人であった。そのうち114人の患者さん(95.7%)が、3mmの細い鉗子(手術器具)を用いて行っていた。 毎回、「今日は3mmでやるからちょっと頑張らないと」って思いながら手術をしていたけど、実際ほとんどの場合、左手には3mmの鉗子を持っていた。思い返せば、5mmの鉗子だけで手術をした思い出がほとんどなかったことに気がついた。 この1年(2025年4月から2026年3月)は新都市病院の婦人科では開腹手術は0件であり、すべてを内視鏡手術でおこなっていた。さらに子宮全摘術のそのほとんどをさらに小さなきずで行っていたことになる。この方法を取り入れて10年以上、また本格的に応用し始めて7年経つ。...

チョコレートのう腫の卵巣温存手術を行うときは術中に柔軟に対応する

チョコレートのう腫の核出術は、だいぶ前から卵巣機能(卵巣予備能、卵子の数など)に対する悪影響が指摘されてきた。つまり、チョコレートのう腫の核出術を行うことによってかえって妊娠しにくくなってしまう可能性の指摘がある。 これはチョコレートのう腫を核出する際に、正常卵巣部分も一緒に取れてしまったり、また出血したときに止血をすることよって正常卵巣部分がダメージを受けてしまう可能性があるためである。 以前からチョコレートのう腫の手術はいろいろな方法が提案されてきた。現在でも核出術(ストリッピング)が第一選択ではあるが、他にも凝固(電気メスやCO2レーザーなど)やエタノール固定などが多くの方法がある。 また患者さんの年齢や挙児希望の強さ、痛みは不妊の程度、あるいはのう腫の大きさ、手術の主な目的(のう腫の縮小?あるいは不妊治療?)などによって手術に対する考え方は異なる。 さらに最も大切なのは手術のときの実際の感触であると思う。正常部分とチョコレートのう腫が分かれやすいのか?その分かれやすさの程度は? 出血しやすいのかしにくいのか?チョコレートのう腫の壁の厚さは

手術の難しさの評価は2つにわける:1年に数件の特に難しい手術とその他のほとんどの手術

手術がどれくらい難しそうかは手術前の評価でおおよその目安がつく。手術を長く行っていることもあり、以前よりその評価はだいぶ正確になってきていると思う。 手術の難しさを考えるとき、大きく分けて2つに考えている。 1つ目が、ごく一部のとても難しそうな手術である。割合からいって1年に数件である。子宮全摘では、例えば、子宮全体の大きさ、子宮筋腫の個数、発生位置、大きさ、可動性、子宮内膜症の有無、また過去の手術歴、その手術内容や所要時間によって評価している。たとえば子宮が臍の直下まであり、卵巣にはチョコレートのう腫があり、子宮筋腫が頚部よりに発生していて、また過去に子宮筋腫核出術や子宮内膜症の手術をしている、そしてさらにはその手術時間が5時間もかかっているような患者さんの場合はやはり最高のリスクと考えている。こういった場合に、手術前には患者さんにはさらに慎重な説明をするし、実際手術は4時間以上かかることが多い。 2つ目は、1つ目に述べたとても難しい一部の手術以外の、ほとんどである。意外に思えるかもしれないけど、だいたいそのように考えている。...

妊娠を成立させる3つの存在

外来で「私は妊娠できますか?」という質問を患者さんから受けることがある。私は子宮筋腫や子宮内膜症、卵巣腫瘍、あるいは子宮内膜ポリープなどが妊娠成立に与える影響については自分の専門であると思っている。でも不妊症の特別の検査や治療は専門外であるので、正直あまり詳しい説明をすることはできない。しかし、この質問について、私はまずは、妊娠が成立するための3つの存在について説明している。とても簡略化してしまっているけど、 その3つとは、 1. 卵子(排卵していること) 元気な卵子が、月に一度、決まった時期に卵巣から外へ飛び出している必要がある。これを排卵という。 2. 精子(そこに存在すること) 元気な精子が、適切なタイミングで子宮内に存在している必要がある。精子の数や運動率など、まずはそこに十分に届いているかが重要である。 3. 卵管(通り道)と子宮(場所) 卵子と精子が出会うための道が通っており、育つための場所が整っている必要がある。 卵管(通り道): 左右にある細い管が詰まっていないこと。ここで卵子と精子は出会い、受精する。 子宮(場所):...

子宮筋腫は手術をしないでなおるのか?

子宮筋腫は手術をしないでなおることがあるんですか?って患者さんに質問されることがある。なかなか鋭い質問だなって思う。 子宮筋腫は良性腫瘍なので、手術で子宮摘出をしたり、あるいは完全に子宮筋腫を核出して取り除かない限りは、子宮筋腫が自然になくなることは残念ながらない。つまり風邪のように勝手になおってしまうことはない。 でも子宮筋腫は閉経を迎えれば、ごく一部の状態を除いて大きくなることはないし、生理による出血や痛みもなくなるので、症状としてはなおるといっていいと思う。また子宮筋腫が子宮肉腫になること(悪性化すること)はほぼ考えにくい。 子宮筋腫はそのもの自体がなくなってしまうことはないけど、閉経して症状がなくなっていればなおっていると考えてよいと思う。 ただし、大きな子宮筋腫や大きくなってしまった子宮、あるいは注意するべき位置に発生した筋腫によっては閉経してもフォローは必要であり、ときとして手術が必要になることもある。

子宮内膜症へのディナゲスト(ジエノゲスト)投与中の自然閉経

子宮内膜症の患者さんはチョコレートのう腫の有無にかかわらず、何らかのホルモン治療を受けていることが多い。 長期的に使用できるホルモン治療の多くが、低容量ピルあるいはディナゲスト(ジエノゲスト)を内服していることが多い。とくに40歳代前半に血栓症のリスクを避けるため、ディナゲスト(ジエノゲスト)を用いることが多い。ディナゲスト(ジエノゲスト)は血栓症リスクがないため、年齢や喫煙の有無にかかわらず安心して投与することができる。 ディナゲスト(ジエノゲスト)は不正出血が多いのが難点であるが、何年も内服していると出血がほとんどおこならなくなることも多い。 しかし子宮内膜症の患者さん、特にチョコレートのう腫があったり、過去にチョコレートのう腫手術をうけたことにある患者さんは卵巣が弱りやすく、閉経が早まることがある。つまり、長年ディナゲスト(ジエノゲスト)を内服していて、さらに出血がなくなっている40歳代以上の患者さんの中には、知らない間に自然閉経していることがある。そんなときは早い閉経によるデメリットが生じることになる。 ディナゲスト(ジエノゲスト)を内服

MRIは子宮筋腫の手術に役立つ

子宮筋腫の手術の際には、日本では多分ほとんどの患者さんがMRIの検査を受けているはずである。MRIを行う理由は2つある。1つは悪性疾患である子宮肉腫との鑑別、もう一つが手術の具体的な戦略を考える際の指針になることである。 子宮肉腫は非常に稀な悪性腫瘍である。良性腫瘍である筋腫と区別がつきにくく、最終的には子宮筋腫や子宮摘出して最終的に診断されることもある。手術前のMRIで肉腫の疑いがある場合、腹腔鏡手術自体が望ましくなかったり、また手術の際には腫瘍をできるだけ散らさないようにする必要がある。そのためMRIは子宮筋腫の手術の際にはほとんど場合行っている。 MRIのもう一つの役割は手術の具体的な戦略を立てるためとても役にたつ。特に腹腔鏡手術においては、開腹手術のように手で直接子宮に触れて確認することができない。モニター越しという限られた情報の中で手術を進めるときに、MRIによる立体的な画像は、いわば設計図となる。子宮筋腫の数や大きさの把握はもちろんのこと、子宮のどこから発生しているかを想像できる。 また、MRIは子宮筋腫の質的な診断にもなる。筋腫には

子宮全摘後の卵巣はどこにあるの?

子宮全摘術を行う際に卵巣をのこす予定の患者さんに、ときどき「残した卵巣はどこにいくのですか?」と質問されることがある。 婦人科の外来でよく使われる説明用イラストは、子宮と卵巣、卵管だけが描かれている。しかし、あの簡略化された図には大切なものが省略されている。卵巣を支える血管と靭帯、そしてそれらを包む腹膜という支持組織の存在である。 確かに子宮(卵管も)を卵管と切り離すと、もしかして卵巣が孤立してどこにいってしまうのかと不思議に思うのかもしれない。 卵巣は二つのルートで支えられている。 一つは子宮とつながる卵巣固有靭帯である。そしてもう一つが、骨盤の壁から伸びて卵巣に血液を運ぶ卵巣動静脈(骨盤漏斗靭帯)である。 子宮全摘術においては子宮と卵巣を切り離す。このとき、子宮側の支え(卵巣固有靭帯)は切断されるが、もう一方の骨盤側からの支え、卵巣動静脈は、血流を維持するためにそのまま残される。 子宮がなくなることで、卵巣の位置はもともとの場所よりわずかに外側へと移動するが、お腹の中を転がってどこかへ行ってしまうようなことは決してない。 ただし、卵巣動静脈(

退院後の発熱や腹痛は早めに受診を

退院を控えた患者さんに対し、私はその前日あるいは前々日に、手術内容の振り返りと退院後の注意点を説明するようにしている。前の勤務先から数えて20年以上、ほぼ全例において、私自身が直接説明を行ってきた。これは、自分でしないと不安だし、患者さんも安心してくれるのではないかと思っている。 子宮全摘術は、子宮筋腫核出術や卵巣の手術といった他の術式と比較して、術後感染(骨盤内感染)の発生率がわずかに高い傾向にある。現在の当院における発生率は約1.2%である。そのため、特に子宮全摘後の患者さんには術後感染の兆候には注意してもらうように促している。 症状としては発熱と下腹部痛である。発熱に関しては37度後半以上、特に38、39度の発熱が生じたとき、下腹部痛に関してはじっとしてても下腹部(骨盤)が重く、差し込むような痛みが続くときなどに注意が必要である。さらには鎮痛剤、解熱剤を内服しても症状があまり改善しないときとか、多少は改善してもすぐに悪化するときはほぼ術後感染をしていることが多い。 これらの症状がある場合、骨盤内で細菌感染が起きている可能性が高い。...

丁寧な暮らしは、PMSが落ち着いてからでいいと思う

ネットや雑誌でPMS(月経前症候群)を調べると、一般論としてこう書いてある。バランスの良い食事を、適度な運動を、ストレスを溜めない生活をなどと書いてあることが多い。いわゆる丁寧な暮らしを実践するような内容であることが多い。もちろん私たち産婦人科医が診療の拠り所にする産婦人科のテキストにもこのように書いてある。 しかし、誤解を恐れずに言うと、このような丁寧なくらしを実践するのは忙しく仕事や家事に追われている女性にとって現実的でないことが多い。すでに黄体期(高温期)に入ってしまい、PMSの症状が始まった時期に「豆類を摂ってウォーキングしましょう」なんて言われても、実際どうなんだろうと思う。もちろん私自身も丁寧な暮らしには憧れるが日々実践するのは難しそうである。 PMSは生理痛などの月経困難症よりもある意味コントロールが難しいこともあるかもと思う。PMSと強めの生理痛の両方のある患者さんは、「痛みは痛み止めをのめば何とかなるけど、PMSはどうにもならない」と言っていた。 PMSは正直、かなり手強い。だから妊娠希望でなければ、排卵を抑制する治療をできるだ

有茎性漿膜下筋腫核出術の出血リスク

漿膜下筋腫は子宮漿膜下に発育する子宮筋腫である。名前の通り子宮漿膜(子宮の最も外側の膜の下に発生し子宮の外側に成長する子宮筋腫である。 特に有茎性(子宮筋腫と子宮本体の接合部が茎のようになっている)の子宮筋腫核出術は、茎を切り離せば核出できることがほとんどであり、また切離面も面積が小さいので容易に手術がすすむと思いがちである。 しかし、特に大きな(直径13-15cm以上)有茎性の漿膜下筋腫は子宮付着部との茎にかなり太い血管(特に静脈)が含まれている。その血管が破綻すると大出血してしまう可能性がある。これは大きな漿膜下筋腫を栄養する血管が全てその茎を通過しているためである。更には子宮筋腫核出後の子宮収縮による止血機序も働きにくく、わきあがるような出血が発生することがある。また子宮傍組織の静脈叢と漿膜下筋腫の周囲の静脈叢が連続して、さらに怒張している場合、あるゆる方向から出血が発生する。このような場合、縫合や凝固による止血も困難であり、最終的には圧迫しか止血方法がないことがある。 過去の症例報告でも数キロ以上の漿膜下筋腫の筋腫核出の際に3000ml以

子宮全摘後の卵巣のフォローアップ:北海道のデータから

子宮全摘手術を受けた患者さんに対しても、卵巣のフォローアップはできれば行ったほうがよいのではと以前から説明している。手術後に何年も受診してくれる患者さんもいる。 最近公表された論文(Fujitaら、2025年)によると、北海道で行われた約48万人の女性を対象とした大規模な調査の結果、子宮頚がん検診に経腟超音波検査(エコー)を併用することで、発見された卵巣がんの81.6%が、早期であるステージIで見つかっていた 。特に、日本人に多いtypeⅠ(明細胞癌や類内膜腺癌など)の卵巣癌の87.0%(特に明細胞癌では95.7%)の発見率であった。つまり日本では経腟超音波検査(エコー)により卵巣の検診は有意義であるとの結論がされている。 卵巣がんの一部は、もともと良性だった腫瘍や子宮内膜症(チョコレート嚢胞)などが、長い年月を経て悪性化して起こることが知られている 。そのため40歳代以降の卵巣のう腫(良性卵巣腫瘍やチョコレートのう腫など)のフォローはかなり注意を要する。 しかし、良性の病気などで子宮全摘を行った患者さんは、必然的に子宮頚がん検診を受ける機会を失

子宮全摘後に更年期の診断するには?

子宮筋腫や子宮内膜症、子宮腺筋症で子宮全摘をした患者さんで、卵巣を温存した場合でも更年期は必ずやってくる。しかし子宮全摘後は生理(月経)がなくなるため、いつ更年期を迎えたのかを自分自身で把握することは難しいことがある。ほてり(ホットフラッシュ)などの明らかな更年期症状があれば自覚しやすいが、そうした症状が出ない患者さんの場合は、本人が気づかないうちに卵巣機能が低下し、閉経していることもときどきある。 そのため、私が子宮全摘をした患者さんには、もしも自分が心配であるならば、40代後半ぐらいに更年期の症状がなくても、一度婦人科で更年期の採血(FSH、E2)をしてみることをお伝えしている。採血をすると、自分が閉経しているかどうかほぼ確実に診断することができる。 また外来での内診の際に腟壁を観察すると、卵巣機能の低下に伴う発赤(萎縮性腟炎)など、閉経のサインを読み取ることができることが多い。これによって、患者さんの身体が更年期に向かっているかどうかは、おおよそ判断できる。   経験的には、ほてり(ホットフラッシュ)などの症状があって、かつ腟壁が発赤してい

皮様のう腫の脂肪成分を漏らさないために

皮様のう腫は腫瘍の中に脂肪、髪の毛、骨、神経などの組織を含んでいる。また皮様のう腫の患者さんは比較的若い女性が多く、卵巣本体を残す卵巣腫瘍核出術を行うことが多い。 皮様のう腫の卵巣腫瘍核出術を行うときに最も大切なのは卵巣本体をできるだけ残し、腫瘍を除去することである。それに加えて皮様のう腫の内容物をできるだけお腹の中に漏らさないことである。皮様のう腫は脂肪が含まれており、これを漏らすと化学性腹膜炎の原因になったり、ゆ着の原因になる。 そのため、皮様のう腫の場合は、腹腔鏡下卵巣腫瘍核出術(TLC)あるいは腹腔鏡補助下卵巣腫瘍核出術(LAC)の2つの術式を使い分けている。 どちらの術式も皮様のう腫を核出することは同じである。腹腔鏡下卵巣腫瘍核出術(TLC)は通常の腹腔鏡下手術であり、専用の細長い鉗子をつかってお腹の中で腫瘍を核出する。お腹のきずが小さいというメリットはあるが、腫瘍がやや破れやすく、内容液(脂肪)がお腹の中に漏れやすいデメリットがある。 一方腹腔鏡補助下卵巣腫瘍核出術(LAC)は恥骨上に3cmほどの横切開を施して、最初に専用の器具で内容

子宮全摘術:退院2週間後の痛み

子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜症などで腹腔鏡下子宮全摘術を行った場合、退院2週後に最初の術後診察となることが多い。  そのときには患者さんはまだ痛みを訴えることが多い。とくに食事後に腸が動いたとき、あるいは尿がたまったときや排尿をするとき、あるいは便がたまったときや排便をするとき痛いとの症状が多い。  手術直後や、入院中と比べると痛みは格段に少なくなっているが、退院後2週間たっても痛みがあるため心配される患者さんも多い。でも全く痛みはないという患者さんはほとんどいなくて、このような痛みがある患者さんのほうが圧倒的に多い。  痛みの原因は、小腸や大腸などの腸管が動いたり、あるいは膀胱が大きくなったときに腹膜を刺激するためではないかと推測している。骨盤底で臓器の動きが大きくなったときに痛みが生じている印象が多い。  このような痛みはその後約2~3週間後にはなくなることが多い。つまり手術をして約1か月を経過ぐらいで術後の痛みがなくなることが多い。申し訳ないけどそこまでは様子をみるしかないことが多い。逆に手術後に痛みが1か月ぐらいは続くことがあることを知

婦人科腹腔鏡手術とBMI(肥満度の指標)

婦人科腹腔鏡手術においては、患者さんの体格、特にBMI( body mass index)は、手術の難易度と安全性に関わることがある。 BMI=[体重(kg)] ÷ [身長(m)×身長(m)] で算出され、日本ではBMIが25以上であると肥満と判定される。この25という数値については色々な見解があるようだが、私自身は栄養や代謝などの専門ではないのでこの数値の妥当性についての評価は難しい。 しかし、自分の経験でもBMIの25という数値は、この体格が手術の遂行に少しずつ影響を及ぼし始める数値であると感じている。 BMI 25を超えると、脂肪層の厚みにより、手術器具を挿入するポートの固定が少し不安定になる。また、お腹の中では術野の展開(手術部位を見えやすくすること)に時間を要したり、内臓脂肪が物理的に作業スペースを圧迫するため、標準体型の場合と比較して、手術のやりにくさが少しずつ生じ始める。少し手術がやりにくいなと思って、BMIを確認すると25を超えていることが多い。 BMI 29を超えると脂肪組織が血管や神経など大切な臓器を覆い隠すため、それらを安全

ダイエットと禁煙:手術が人生の転機になることもある

婦人科腹腔鏡手術を前に行う診察で、私は患者さんに減量を依頼したり、喫煙の習慣がある方には禁煙をお願いしたりすることがある。どちらも、手術を安全に遂行するために必要であることが多い。 手術を受ける際、患者さんにできることは意外と少ない。麻酔がかかってしまえば、あとはすべてを術者に委ねるしかない。その中で、手術に向けての体重の調整と禁煙は、患者さんが自ら手術の安全性を高めることができる、数少ない準備である。 手術当日、減量や禁煙を実現して来られる患者さんもいる。そんなとき、私はすっかり感心し、とても感謝している。 さらに嬉しいのは、手術をきっかけとして、術後も体重管理や禁煙を継続してくれる方がいることである。ときにには「手術がきっかけになり、その後の体調や人生そのものが良い方向に進んだ」という言葉をいただくこともある。病気を治すための決断が、人生の質を底上げするきっかけになっていることがある。 私自身にもなかなか改善できない生活習慣はある。一応、医師ではあるのだが、健康を人生の主目的に据えて生きるのは、少し苦手ではある。 もちろん、自分も含め、周りの

手術の前になぜ禁煙したほうがいいのか?

手術の予定が決まったとき、もしも患者さんが喫煙者であった場合はごく一部の場合を除いて禁煙をお願いしている。手術に迎えるにあたり、喫煙は手術予定のある患者さんにとってほとんど良いことがないのだけれど、ときどきなぜ禁煙しないといけないかと言われてしまうこともある。確かにいきなり断定口調で言ってしまって反省することもある。 婦人科腹腔鏡手術に関して、喫煙がもたらす主なリスクは①全身麻酔に関する呼吸器合併症のリスク、②血栓症のリスク増加、③創傷治癒の遅延などがある。 全身麻酔における呼吸器合併症のリスク: 喫煙は気道を過敏にし、痰の分泌を著しく増加させる。それだけでなく、一酸化炭素がヘモグロビンと結合することで、血液の酸素運搬能力が物理的に奪われるのである。これは麻酔中の換気不全や、術後の肺炎などを引き起こす原因となる。実際喫煙している患者さんの術直後は少し苦しそうに思える。 血栓症(肺塞栓症、深部静脈血栓症)のリスク増加: ニコチンは血管内皮を傷つけ、血液の粘度を高める。婦人科手術などの骨盤内手術はもともと血栓症のリスクは他のメジャーな手術と比べて低い

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