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経過の長い子宮内膜症のゆ着のリスク

子宮内膜症のゆ着(くっついていること)は経過が長いとそのはく離(はがすこと)が難しくなることがる。子宮内膜症の病変は慢性炎症がおきていて、最終的にその部分は線維化して固くなっていることが多い。化膿した皮膚でもそのあとしばらく皮膚が固くなっているのと同じことである。つまり年齢の若い患者さんの子宮内膜症は経過が短くゆ着ははがしやすいことが多い。ただしまさに炎症がおきている状態なので出血はしやすい。一方、閉経前後以降の患者さんの子宮内膜症の病変は線維化がすすんでいるので出血は起こしにくいかわりに、固く、その部分をはがすのが難しいときがある。そんなときに注意しなければいけないのが、尿管膀胱損傷、腸管損傷などである。自分の経験でもかなり注意していないと、尿管が思いがけずチョコレート嚢腫に近寄っていたり、それが固くゆ着していることがある。ある報告でも40歳代以上の子宮内膜症の手術は他臓器損傷のリスクが、その年代以下の患者さんの手術と比べて高いといった報告もある。  ゆ着は実際に手術をしてみないとそのはく離の難易度は分からないことが多いが、このようなある一定の

PMS(月経前症候群)と更年期障害の違い

40歳代前半になると既に更年期に入ったのではないかと心配される患者さんがときどきいる。毎月生理前に一週間ほどイライラしたり、体がだるくなったり、また便秘がちになったりするような症状である場合がある。これはPMS(月経前症候群)であり更年期障害とは異なる。PMSは意外にも40歳代前半は症状がつらいことが多い。  PMSは排卵後にプロゲステロン(黄体ホルモン)が上昇することによってこれらの症状が生じる。つまり規則正しく排卵し、ホルモンバランスがとれているからPMSが生じてしまう。  逆に更年期障害は年齢とともに卵巣機能が低下し、排卵を起こさなくなったり、エストロゲン(卵胞ホルモン)が低下することによって、ほてりや動悸を始めとした症状はおこる状態である。つまり更年期障害はホルモンバランスが崩れ始めるとこのような症状がおきる。  治療もそれぞれ逆の方向である。PMSは例えば、低用量ピルなど排卵を抑え、女性ホルモンを抑制するような治療、更年期障害は女性ホルモンを加える治療である。どちらも女性ホルモンが関係する状態であり、ときには生活に支障が出る場合もある。

PMS(月経前症候群)と子宮摘出

PMS: 月経前症候群に悩んでいる女性は多い。20代から40代中盤までくらいの女性に多く、イライラしたり、怒りっぽくなってしまたり、ウツのような精神的症状、またむくみや乳房が張ったり、頭痛などの身体的症状に悩まされる。PMSは月経周期の中盤で排卵がおこり、その後プロゲステロン(黄体ホルモン)が分泌することによって生じる。これらの症状のおきる時期は大体決まっていて、PMSの患者さんが受診するときはほとんどの場合、自分でPMSで困っていると言ってくれることが多い。PMSはなかなか手強く、例えば痛にたいする鎮痛剤のように、対症療法的な薬剤も少ない。PMSのなかでも特にPMDD(月経前不快気分障害)にまで及んでいる患者さんは毎月、日常生活が支障がでるほど苦しんでいることがある。  子宮筋腫などで子宮摘出をする場合、卵巣は温存することが多い。卵巣からの女性ホルモン(エストロゲン、プロゲステロン)の産生を残すためである。子宮を摘出すると、生理はもちろんなくなるが、卵巣は機能は基本的に残る。そのため、術後に患者さんにまたPMSの症状がでてきたといわれることがし

手術後の食欲

手術をした翌日朝は、患者さんに食欲はあるかどうかと尋ねることが多い。手術翌日朝に訪室したときに、もうお腹が空いて早く食事をとりたい!、なんて言ってもらえるとほとんど安心できる。通常は腹腔鏡手術を行った翌日昼から食事を開始する。申し訳ないけど少し我慢してもらっている。風邪をひいたときも、大概は食欲がなくなったり、なんか調子悪いなと思ってから本格的に発熱や喉の痛み、咳などが始まることが多い。また痛みが続いていたり、精神的に調子が悪いと食欲は落ちることが多い。やはり手術後の経過も同じで痛みが続いていたり、術後感染の兆候があると食欲は落ちていることが多い。また患者さんはなんとなく元気がないことが多い。  文献的には消化器領域の外科手術後に食欲が落ちているときはその後の合併症の発生率が高いとの報告が散見される。消化管のトラブルなのでその前から食欲は落ちているのは納得しやすい。 残念ながら婦人科領域ではこのようなエビデンスは確認できなかった。患者さんのの食事摂取量は看護師がカルテに記載してくれている。これも患者さんの状態をするのに重要であるが、もう一つ、

2300件の手術

2018年1月から今年の8月までに新都市病院で勤務してから他院での手術を含めて約2300件(腹腔鏡手術、子宮鏡手術)を行った。以前勤務していた病院での手術件数(腹腔鏡、子宮鏡手術、2005年~2017年)が約2300件であり同数の手術を行ったことになる。  新都市病院は私が勤務するまで婦人科手術の実績はなかった。また病院の規模も小さい。新都市病院に手術目的に受診をしてくれた患者さんは大丈夫か心配であったと思う。勤務医なので病院全体としては自分の思いや考えが及ばないこともしばしばあったが、一人一人の患者さんにはできるだけ不安を少なくすることを心掛けた。また患者さんを紹介してくださる開業の先生方も新都市病院を患者さんにご案内するのは大変であったはずである。患者さんを近隣の基幹病院に紹介をするのはそんなに大変なことではないかもしれないし、患者さんも納得しやすいであろう。でもわざわざ私や病院のことを紹介していただいただくためには、患者さんへの説明は詳細にする必要があっただろうし、仕事量が増えてしまったと思う。感謝してもしきれないとずっと思っている。...

子宮全摘をすると更年期になるのか?

ときどき患者さんから「子宮をとると更年期になりませんか?」と質問をうける。更年期は医学的(産婦人科的)には閉経前後のそれぞれ5年間、あわせて10年間を(更年期)という。50歳前後で卵巣機能が低下、あるいは停止して女性ホルモンが出なくなる状態である。    子宮筋腫で子宮全摘をする場合、多くの場合卵巣は残すことが多い。手術後も卵巣から女性ホルモンは出続けるので手術後に急に更年期になることは少ない。子宮をとってしまうと更年期になって倒れてしまうのではないかとかなり心配してしまう患者さんも時にはみえるが、できるだけこのことは時間をかけて説明している。やはり手術後の回復は身体的な回復に加えて、精神的な回復や安心感もとても大事なのでこのことをよく理解してもらうようにしている。子宮を全摘すると、そのことで体調がずっと悪くなるのではないかと心配し続けていると手術経過は問題ないはずなのに、体調や精神面が悪くなりかねない。子宮摘出の計画をしたときに患者さんには基本的には大丈夫であることをよく理解してもらえるようにしている。  ただし子宮を摘出すると若干卵巣機能の低

10月から土曜日診療を開始します

土曜日午前中の外来診療を10月から始めることになった。新都市病院で診療を始めて7年以上経つがこれまでセカンドオピニオンの患者さんや緊急受診を除いて土曜日は休診にしていた。しかし婦人科の患者さんには平日仕事や家事で忙しいことが多く土曜日受診を希望されるかたが結構みえた。また仕事を休んで平日受診してくれる患者さんも多く心苦しく思っていた。これまでいろいろな障壁があり土曜日診療を実現することが困難であったが、10月からいくつかの課題が解決され診療を開始することになった。  特に初診の場合、子宮筋腫や子宮内膜症、卵巣腫瘍などが心配であったり、また手術を迷っているけどなかなか平日に受診できなかった患者さんなどのお役に立つことができたら幸いです。もちろんその他の症状や心配事のある患者さんも遠慮なく受診してください。

自分の感性でおかしいな?と考える

産婦人科医の仕事をしているときも、普段生活していくなかでも少しおかしいなって思うことがある。産婦人科医になって30年弱経つが大きく変わったことも多い。個人的な趣味として古い(30-100年前以上)手術論文を読むことがある。すると現代にもつながる普遍的な手技がすでにその時代に完成されていることを知る。一方、なぜこんな手技があったのかと驚いてしまうこともある。私がこの20年ほど行っている手術は実はそれほど変化は少ない。深部子宮内膜症の切除、子宮筋腫の核出、子宮摘出、骨盤臓器脱などの腹腔鏡手術は既に1990年代全前半にはそのコンセプトは報告されていた。その後術式が細かくモディファイされたり、ロボット支援下手術が導入されている。    しかしこの20年でも、そのときは皆がそれが良いと思っていたり、ある種の流行をしていた手技はいくつかある。そしてだれもがほどんと行わなくなってしまった手技もある。やはり廃れてしまった手技は今になって振り返ると自分もそのときに何か違和感というか、おかしいというか、しっくりこないと思っていたことが多い。それが医学的なエビデンスあ

原点としての子宮筋腫核出術

子宮筋腫核出術、特に腹腔鏡下子宮筋腫核出術(TLM:Total Laparoscopic Myomectomy)は自分が腹腔鏡下手術を始めたときに最も魅せられた術式である。子宮筋腫核出術は子宮筋層に切開を入れ、筋腫を核出(取り出す)し、筋層を縫い合わせる。最後に核出した子宮筋腫を体外に回収する。手術の行程は極めてシンプルである。シンプルであるが故に、術者の技量に手術の結果が左右されることが多い。特にTLMの場合、体腔内縫合に習熟しないと出血のコントロールや子宮筋層の再建を行うことができない。そのため子宮筋腫核出術のための体腔内縫合をかなりトレーニングした。学会や研究会でも他の医師の美しく迅速な縫合結紮に感動し真似をしたいと思った。    子宮筋腫核出術は手術の剥離、縫合、止血、再建などの手術の基本操作がややダイナミックなかたちで全て含まれている。そのため一人の婦人科医の手術手技の向上にも寄与すると思う。手術後の再発の可能性もあり適応には慎重を要するが、子宮筋腫を核出することで妊娠できたり、痛みや過多月経の症状も改善することも多くやりがいを感じてい

手術室としての手術への安全性

婦人科腹腔鏡手術は、執刀医一人で手術が達成できることは少ない。そのため手術室スタッフの手術への理解や経験は重要である。新都市病院は小規模な病院であるために手術室スタッフの人数も少ない。人数が少ないので、手術が忙しくなるとそのメンバー配置は大変であると思う。一方、人数が少ないと手術に多く携わることができる量といった点ではメリットがある。    私が新都市病院で婦人科腹腔鏡手術を始めたときは手術室にそれまで経験がなく大変であったはずである。しかし7年以上がすぎ、現在はどのスタッフが手術の器械出しや外回りの業務を行ってもほとんど精度をおとさず業務を遂行できている。これは正直、規模の大きな病院ではなかなか実現が難しい(もちろん病院の個体差によるし、小さければよいわけはない)ことである。もちろんマニュアルをつくって業務の標準化を図ろうとするが実際にそれを運用するのは困難なこともある。    新都市病院では婦人科の手術を始めたときに、最もセンスがあり術式の理解に優れたスタッフにまずはほとんどの手術に参加してもらい細かなニュアンスまで徹底的に理解してもらった。

子宮を摘出すると子宮があった場所はどうなる?

患者さんからよく聞かれる質問に、子宮を摘出するとそこはどうなるか?つまり空洞や空間ができてしまうのか?といったことがある。  これはなかなか難しい質問ではある。臓器は機械の部品と違ってそこを取り外したりするのと異なる。お腹のなか(つまり腹腔内)は実は腸管(小腸、大腸)の存在感が圧倒的に大きい。つまり腹腔鏡でお腹の中に入ると、子宮や卵巣はほとんどの場合、腸管の下に隠されている。子宮筋腫や卵巣腫瘍が大きいと腸の中から顔をのぞかせていることがある。骨盤高位(頭を下げる体位)にしてようやく子宮や卵巣を確認できることが多い。つまり一般的には子宮や卵巣はお腹の中では存在感は小さい。それよりも腸管の体積が圧倒的であり、しかも腸管は蠕動(動いていること)をしている。子宮を摘出したあともその場所で相変わらず腸管が動いている。だから空洞や空間ができてしまうことはない。  やはりなかなか説明しにくいが、子宮や卵巣はお腹のなかでの機能は別として、大きさといった意味では存在感は小さい。子宮や卵巣を摘出してもそこを相変わらず小腸が動いている。

子宮筋腫による痛み

子宮筋腫は意外と痛みを感じることが少ない。むしろ痛みがないことが基本であると考えている。しかし子宮筋腫でもかなり強い痛みをを感じることがある。その原因には主に2つのパターンがある。    1つは子宮筋腫の変性によるものである。変性というのは筋腫が通常ではない状態になってしまうことである。別にがんに変わるわけではない。変性もいくつか種類があって特に赤色変性といわれる変性が生じたときに痛みや発熱が発生することがある。妊娠中に発症することが多いが、分娩が終了すると軽快することが多い。しかし次の妊娠のときの再び痛くなることがあるので子宮筋腫を核出する場合が多い。また妊娠中に限らず変性による痛みが発生することがある。このようなときも最終的には手術を行う必要がある。  2つ目は筋腫が大きくなってお腹を圧迫しているときに痛みが生じるときがある。これはおそらく大きくなった子宮が腹膜とぶつかって、子宮自体が痛くなったり、あるいは腹膜が刺激されて痛くなるものと考えられる。また痩せ型の体型の患者さんに痛みが生じやすいのでもしかしたら皮膚の知覚への刺激も生じているのかも

術後3-4日目の採血の重要性

新都市病院では、婦人科腹腔鏡下手術の入院日数は5泊6日であり、術後3-4日目に採血をしている。  術後感染は術後3-4日目に明らかになることが多い。これは産婦人科、外科、泌尿器科など外科手術に一般的なことである。手術後の採血は手術翌日、手術後3日目に行っている特に3日目の採血は重要であると考えている。患者さんの状態は悪そうではないのに、想定より少し白血球が高かったり、好中球の割合が高かったりすることがある。こんなときはその日の夜間や翌日に本当に発熱や下腹部痛が発症して術後感染が明らかになることがある。またやはり患者さんの状態は悪そうではないのに思ったよりも貧血が進行しているときがある。そんなときにCTや超音波検査をしてみると血腫が形成されていることがある。早めに対応ができて難を逃れることができたこともある。また患者さんの状態が一見よさそうだとこちらも安心してしまいお腹を触れたりすることが疎かになることがある。そんなとき採血検査によって心配になり、お腹を触れてみるとやはり少し張っていたりすることがある。  術後3日目の採血結果は緊張してみている。

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